今年、18回目となる神楽坂のお祭り(文化祭)が、10月15日から11月3日まで、街を挙げて 賑々しく開催されました。開催直後には、テレビでも取り上げられて紹介されていました から、ご存知の方もおられるのではないかと思います。 神楽坂・・となれば、何をおいても、住人である、そして研究熱心な“若さん”が思い 出されます。
早速、若さんから「神楽坂まち飛びフェスタ」の記事が届きました。 アメリカ大統領 選挙で 記事の完成が遅れたと言っておられましたが、なぁ~に、まだまだ新鮮で採れたて ですから そのままお召し上がりくださいませ。
****** 若さんの神楽坂研究(5) 神楽坂 まち飛びフェスタ ******
“まち飛びフェスタ” は神楽坂の文化祭!
2016ポスター ボランテイア(毘沙門天) ギャルソン・レース 化け猫フェステイバル
7月、民主党びいきの米国人からIn the meantime, we’re being entertained by crazy American politicsとメールが来ました。今年は、マスコミや評論家が予想できなかった 事態が続いています。 英国EC離脱(Brexit)、フィリピン、ドゥテルテ大統領の米国との 同盟解消発言そしてトランプの大統領選勝利です。政策論争なく相手候補非難、中傷、人種 差別発言、セクハラして大統領になるなんて、益々米国という国が分からなくなりました。
さて、今年も10月15日から11月3日まで、1999年からつづく「神楽坂まち飛びフェスタ 2016」が開催されました。 地域住民、商店、企業そして遊びに来た人たちを巻き込み70 近くのイベントで盛り上がりました。
今年は夏目漱石没後100年、生誕150年の記念年にあたります。ポスターも漱石夫妻と 「吾輩は猫である」をイメージさせる出来になっています。(ポスター大賞の作者はローラ・ ジェーン・ウイリアムスさん) 漱石が大好きだった神楽坂は猫の街としても知られています。 毎年期間中(今年は10月16日(日)に化け猫フェステイバルという猫版ハロウイーン(仮装 パレード)で盛り上がりを見せています。猫らしい仮装をしていれば老若男女だれでも 参加できる楽しいパレードです。見ていると、子供たちに交じって、行きつけのバーの ママや、飲み屋のおやじが猫になって練り歩いているのを見て結構笑えます。
10月23日(日)はパリが総本家の「ギャルソン・レース」です。神楽坂上から100m坂道を コップの水をこぼさず走り抜ける、ボーイさん(ギャルソン)のレースで石畳と坂道のパリの 裏道っぽい雰囲気をもつ神楽坂らしいイベントでした。 最終日(11月3日)は神楽坂下から 上までお絵かきの紙をつなげ(700m)自由気ままな絵を描く「坂にお絵かき」で打ち上げと なりました。お天気にも恵まれ子供たちと、お父さんお母さんたちが通りを占領する少子化 時代に珍しい景色になります。 そして、これに続いて、法政大学、東京理科大学などの 文化祭のシーズンに突入です。
神楽坂はやっぱり芸者さんと伝統芸能…
約20日間の文化祭ともいえる期間中、ぜひ気軽に参加(要予約)してほしいのは伝統芸能 関連です。矢来町で「はじめての矢来能楽堂」、赤城神社の「赤城寄席」と街中のお店での 寄席、江戸初期から続く武家茶道「綺麗さび」の遠州流茶道など豊富な体験イベントがあり ます。特におすすめは、神楽坂の見番(けんばん)を開放しての(2部、各回定員40名、 @¥2,500)「ざ・お座敷入門」、鰻の志満金のお座敷で行われる投扇興(とうせんこう、 江戸時代には禁止令が出たほどの人気ゲーム)、毘沙門天善国寺書院での「小唄と踊り」も 花街の香りというか雰囲気を味わうには楽しい企画だと思います。 見番での出演芸者衆は、立方(舞踊):英子、小夏、㐂よ乃 唄:眞由美 三味線:あやめ、 櫻子、 鳴物:由みゑさん達でした。 英子さんは芸者新道でバー「英」を営んでいて、 お座敷のない時は着物姿でママしていて、年に何回か琵琶の演奏もしてくれます。
来年9月には夏目漱石記念館が開館予定なので神楽坂での楽しみが増えます。前号で夏目 漱石はプレイボーイだった!?と書きました。神経衰弱気味、病弱(胃潰瘍、糖尿病)堅物 イメージが漱石にはついて回ります。若いころと、作家になってからも漱石が大好きだった 神楽坂の花街(かがい)のフレーバー(芸者、お座敷遊び、落語、飲食店)を自分自身で 体験して漱石の神楽坂への思いを妄想していただくのも面白いと思います。
漱石は官費で1900年(明治33年)英国に留学、1904年には強度の神経症を患い帰国させられ ました。当時のロンドンは世界一の人口密集都市で公害先進都市。19世紀半ばまで、再三 コレラが大流行、水洗トイレ普及も水質汚染悪化させました。そんなひどい水質汚染状況 なので、英国人は伝染病予防のために風呂に入らない風習が生まれたそうです。 スモッグ(Smog=Smoke+Fog)という英語もロンドンの大気汚染から生まれました。実に 20世紀半ばまで有効な大気汚染対策はうたれず、1952年(昭和27年)には亜硫酸ガス濃度の 高いスモッグで、4,000人の犠牲者がでました。風呂も入れない、芸者と遊べない、寄席も ない、和食もない そしてスモッグに汚染されたロンドンで、大学の講義も授業料の無駄と 自主退学した漱石の境遇を思うとメンタルを患ったのも理解できます。
お座敷遊び 兵庫横丁(幸本、八仙、和可菜 ) 伊勢藤(いせとう) 投扇興(とうせんこう)
数年前、元会社の上司と共通の知人の米国弁護士さん来日の折、兵庫横丁の料亭「幸本」で ご接待しました。たまたま、英子さんがお座敷にあがってくれ、楽しくお座敷遊びしました。 幸本は、本多横丁の「牧」と並ぶ料亭です。鎌倉古道のなごりといわれる兵庫横丁を、先代が ピンコロの石を敷いてさらに風情ある石畳の坂道にしました。春、夏、秋に「幸本会」という 毎回満員御礼のお座敷遊びの新人向け研修会が開催されています。(今年で36回)おそらく 大広間に芸者さんが勢ぞろいしての踊りは、幸本会以外には見ることができない時代になった ようです。とにかく席の目の前で足袋と畳のすれる音、着物の風きり音を感じながらの踊りは 迫力と華やかさがあります。初心者、外国人だけでなく旦那衆、常連さんのご家族も毎回参加 され、伝統的お座敷芸とお色気も楽しめます。(要予約、@¥28,000―¥33,000) 幸本の向かいに、野坂昭如、山田洋二監督などが編集者にカンズメにさせられた、ホン書き 旅館(朝食つき一泊@¥10,500)、向かって右が 現役芸者さんが元料亭をリノベーションした 人気のバー併設の、唯一の貸席「八仙」。坂道を毘沙門天の方に上がるとミシュラン☆付き そば粉クレープで大成功した「ブルターニュ」。 その向かいが昭和12年創業、戦災で焼失後再建した見るからに昭和の風情の縄のれん「伊勢藤」 があります。軽子坂「桝本酒店」が明治19年に見出し、のちに唯一の伊勢神宮御料酒に登り 詰めた灘の「白鷹」のヌル燗だけしか飲めない名店です。ある時、顧客と2人で入店したとき、 いろりでヌル燗をつけている主人にジロッと睨まれ「ご酒を召しあがられていますね?」と 威圧的一言からはじまり顧客との会話も隣の常連から「静かに」と注意され、燗酒は三本までの 制限付きというステレオタイプがしみついた店です。今三代目に代わったのでそろそろまた 行こうかと思っています。真夏でも冷房なしなので要注意です(笑)
「幸本会」での芸者衆、Cool!
神楽坂で、フランス文化も楽しめます!
”朝霞荘“ 毘沙門天御朱印(節分) アンステイチュ・フランセの庭(夜景)
これから、年末にかけてフランスの文化、食にふれるのも神楽坂の楽しみです。市ヶ谷 砂土原町3丁目にはフランス人駐在員が多く住んでいます。そして、神楽坂から少し市ヶ谷 寄りの「逢坂」の中腹(市ヶ谷船河原町)には、フランス政府公式機関としてのアンステイチュ・ フランセ東京(旧日仏学院)があります。都心にしては、貴重な木々と芝生の緑に囲まれた 素敵なジャルダン(庭=Jardan)と、粋なたたずまいのレストラン(ラ・ブラスリー)が 併設されているい癒しの場です。
11月17日はボージョレー・ヌーボー・ナイト、そしてクリスマス(ノエルNoël)にはマルシェ ドノエル(クリスマスマーケット)が開かれます。 毎月、いろいろな地方のワインセミナーも 開催されていて、11月27日はボルドーです。 3月は世界中同時に開催される食の祭典(グー・ ド・フランス)東京会場として屋台や、ライブで盛り上がります。 勿論7月には革命記念日 (パリ祭)で駐日大使も参列。 過去に、ムーランルージュのカンカンを見ながらのデイナーや 東京ジャズ・フェステイバル参加の仏人ジャズマンのライブもあり、イベント情報チェックは 欠かせない超穴場です。週末は結婚披露宴の貸切りも多いので事前に電話をお忘れなく。
神楽坂の芸者さんの副業というか 今や本業化しているバーに通っていると、節分には ちょっと楽しいイベントが待っています。毘沙門天の節分豆まきには、必ず芸者衆、旦那衆が 豆まきに参加しています。夜、料亭のお座敷では「お化け」といって芸者衆がそろって仮装して の踊りでお座敷を盛り上げます。そしてそのままの仮装でお店に流れてくれて、ちょっとした ミニ・ショウを楽しむことができます。(行く時は、ポチ袋と祝儀をわすれずに!)
“Here we are. This is my house!”
最後に個人的な笑い話です。アンステイチュ・フランスから歩いて一分のところに某大手 損保会社の接待寮「朝霞荘」(写真上左)があります。実にゴージャスな平屋の日本建築で、 玄関わきには黒塗りが10台は駐車できます。サラリーマン時代、某都市銀行や上場企業の 接待寮で接待をうけたことがありますが、ここは雰囲気的には都内トップクラスのひとつだと 思います。
2000年にコンサルタント業として(私が)独立して以来、仕事は車。 そして米国、カナダ 企業の日本代表的な仕事が中心で、顧客とのデイナーがない時はほぼ、夜のヨコ飯(英語会話で 食事)は神楽坂でした。 今も昔の同僚や知人が来日するときは神楽坂です。 先月もハワイから27年ぶりの知人が来日、新宿のホテルでピックアップして自宅に車を 置いてから神楽坂に出撃です。途中、「朝霞荘」の駐車場で“ハイ到着、ここが私の家です!” といって驚かせます。大抵、ポカーンとして Oh really! と口にでるまで10秒の沈黙時間が 流れます。 Just joking HA HA! といって自宅に移動し(長屋=タウンハス)のウサギ小屋駐車場に入れる 時,切り返しを何回も見せて、また驚かせます。(笑) ちなみに、神楽座坂研究(1)は英語版もあり事前に彼に読んでもらい、何軒もはしごした 結果“Unforgettable night だったのでまた来るときは神楽坂をもっと研究したいので よろしくとのこと…でした。 (つづく)
神楽坂研究by若林成明
VIDEO