若いころから小説とかエッセイなどというものには近づいてこなかった。推理小
説などにも未だにあまり手が出ない。
歴史小説やエッセイを好むようになったのは、50代に入ってからかもしれない。
小学生のころからラジオ少年でしたから、高校は普通高校ながらそのままいわゆる
理科系に進んだせいでどうしても、人文科学よりは自然科学の方に思考が偏ってい
たんだと思います。
だから、このロゲルギスト著、「物理の散歩道」は、学生の頃には愛読書のひとつでした。
岩波書店、全5冊・・後に続編5冊が出ました。 当初5人(後に7人)のそれぞれ専攻が異なる
物理学者が、日常の出来事のふしぎをさまざまな角度から議論し、あるいは実験で確かめていく。
ときに予想外の結論は当時、「科学少年たち」を夢中にさせたようです。
ディスカッションの楽しさと物理的思考法のみごとさが伝わる定評のエッセイです。
で、このロゲルギストというのは、このような人がいるのではなく、純粋な日本人
5人(後に7人)で、専門分野の異なる大学理学部出身のメンバーを総称したネーミ
ングである。ネットでは、ギリシャ語のロゴス(logos、言葉)とエルゴン(ergon
仕事)とを繋いで作った言葉「ロゲルギーク (Logergik)」に由来し、「『情報』
と『エネルギー』の両面から物理現象を見直す」という主旨だそうです。
いつのころか、本は散逸してしまって手元にはないのですが、あれば、もちろん
再読して一人でほくそ笑んでいるかもしれません。 割と有名?な本なので、読ま
れた方も多いかもしれませんが、どんなことが書かれているかというと、もうほと
んど忘れてしまいましたが、いわゆる物理的な解説エッセイと言えるかもしれません。
「切れるというのはどういうことか?」 ナイフの刃を顕微鏡で調べてみると、
刃がでこぼこしていることがつまり切れることで、でこぼこしていないと切れない。
「丸ビル大の豆腐はつくれるか?」豆腐の質量と強度計算から、とても持ちこた
えることができないので作れない。 「水滴が水面に垂れてなぜ音がするのか?」
「海人と力士」「洋文字は縦線が多く、和文字は横線が多い」 「砂は濡れるとな
ぜ黒くなるか?」・・・などなど、内容は今は忘れてしまいましたが、どれも物理
的な観点で、数式を用いたり、実験したり・・ものによっては、それは大掛かりな
仕掛けもあったりしていました。
なぜ今頃こんなことを思い出したか? 最近というか、仕事から離れてしばらく
していると、ものの道理とか、原理とかそんなことに思いが至ることはまず少ない。
産業がどうの、円高はいつまで続く? 災害とは? 政治の混迷・・・などどれを
とっても、ウンチクを傾けられるものはないが、日常そのようなニュースばかりに
取り囲まれ、知らず知らずにそのような環境の中にうずもれていることに、ひょっ
として反発したい衝動から・・・?
いや、そんな殊更の理由などはなく、ただ、ふっと思っただけなのかもしれない。