立春の翌日の今日は、視界が妨げられるほどの雪が舞っています。
今夜は関東地方も大雪になると予報が出ています。
既に会社組織での仕事から離れて久しく、いまさら思考法について改めて論じる必要はあまりありませんし、
そのことのためにここに取り上げたわけではありません。
例によって、ネット配信される H氏 の記事に、このことについて、新商品・サービス開発の事例を引いて面白く
述べられていましたので、そのような発想法について、以前職場での会議等で方向性をまとめるのに際して参考にした、
当時話題の1つにもなっていました “6色ハッとの発想法” に想いが行き、懐かしくもありましたので、ここに
そのサワリを振り返って見たいと思いました。 そういえば、当時 “水平思考” などという言葉も新鮮でした。
6色ハットの発想法(Six Thinking Hats)は、エドワード・デ・ボノ博士がかって、会議等の議論をまとめるのに
有効な方法論として提唱され、広く会社で活用されていました。
ネットによれば、“人間の思考は、「客観的」「感情的」「否定的」「肯定的」「創造的」「思考的」の6つの異なる方法で
考えたり、情報を処理したりするという前提に基づいていて、それらに考えやすいように6つの色を付けたのです。
それを帽子の色として、それそれの思考のメタファー(暗喩)として使われるというものです。帽子の色を変えることが、
考え方を切り替えることを比喩的に表しているのです。このメタファーを用いることで、各人が話している言葉に対して
先入観を持つことなく、完ぺきに言葉だけを分けて話すことができます。この思考法によって、より深い思考へと
導きやすくなります。思いついたアイデアの問題点と解決法を知りたい場合は、6色ハット発想法を使うといいです。”
と述べられています。
6色ハッと
(ネットより)
例えば、ネット(ニフティ ボノ)に、次のような例があり、ここに引用してみますが、固定概念を外す面白い例です。
「多額の借金をした父親と娘に対して年老いた醜い金貸しがチャンスを与えます.敷地に散らばっている石から
白い石と黒い石をひとつずつ選んで袋にいれた籤(くじ)を作って引かせてあげようと提案したのです.
『娘がもし白い石を引いたら借金は帳消しだし 何もしなくていいが,黒い石を引いたら借金は帳消しにするが
娘は嫁として貰い受ける』 と言いだしたのです.『このチャンスに掛けないなら借金をすぐに返せ』と金貸しは
迫ります.
若く美しい娘は年老いた醜い高利貸しのところには嫁に行きたくありません.でも,高利貸しが2つとも黒い石!の
籤を作るところを娘は見てしまいました. 『このとき娘はどうするのが賢いか?』…と デボノは問いかけました.
既成の枠に捕らわれた垂直思考では,『籤を引くのを拒否する』,『インチキを暴いて籤を作り直させる』,
『父親を救うために諦めてお嫁にいっちゃう…!?』 とかいう考えしか浮かびません.垂直思考では『娘が取出す
石の色』に捕らわれたままなので,有効な問題解決方法が見いだせないのです.
水平思考では袋の中に残る石の色にも注目します. 娘は籤を引きます. が,石の色を確かめる前に!
敷地に落してしまうのです!…『あらっ, 私ってそそっかしいわね. でも大丈夫!袋に残ってる石の色を見れば
引いた石が何色だったか分かりますものね♪』 と。
また、デ・ボノ博士は、PMI法というのも提唱しています。 PMI法というのは、アイデアをプラス(PLUS)、
マイナス(MINUS)、興味(INTEREST)の視点から評価する方法で、アイデア発想のアイデアというよりも
アイデアの検証方法として有効な手法だといえるでしょう。 しかし、アイデアを評価することで、新たなアイデアに
展開していくことも多々ありますから、これも有効かもしれません。 はがしたりできる紙片の “ポストイット”
などは、興味(INTEREST)から発展していったといわれています。
お待たせしました。 今回、配信されてきました “思考法” について、以下にコピペしておきます。
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『インサイドボックス 究極の創造的思考法』 原書:INSIDE THE BOX(2013)
ドリュー・ボイド/ジェイコブ・ゴールデンバーグ 著 池村 千秋 訳 文藝春秋 2014/05 352p
序.創造性は誰もが習得できる技能だ
1.イノベーションは制約の中にこそ潜んでいる
2.引き算のテクニック
3.分割のテクニック
4.掛け算のテクニック
5.一石二鳥のテクニック
6.関数のテクニック
7.矛盾を見いだせ
8.人類の思考パターンを活用して変革を起こせ
【要旨】「型破りの発想」という表現がよく使われるように、創造的なアイデアは、決まった「型」の“中”にハマって
いては出てこないものと思われがちだ。しかし、本書の主張は、その逆。枠の外(アウトサイドボックス)ばかりで
物事を考えると思考が無秩序になる。それよりも、一定の枠内(インサイドボックス)で思考を巡らせたほうが集中して
頭脳を働かせられるというものだ。本書ではその前提のもと、著者らが編み出した「体系的創造思考法」の
土台となる五つのテクニックについて豊富な具体例とともに解説している。それらのテクニックをヒナ型にして
思考することが、アイデア創出の近道となるという。著者のドリュー・ボイドはジョンソン&ジョンソンでの17年間の
経験をもとにイノベーションについて多数の企業を指導している。ジェイコブ・ゴールデンバーグはコロンビア大学
ビジネススクール教授を務めるマーケティング学者。
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●アウトサイドボックスでは思考が無秩序になる
これまでの常識では、創造のプロセスを体系化することはできず、定石やパターンにはめ込むことは不可能だと
考えられてきた。真に独創的で革新的なものを生み出すためには、枠の外(アウトサイドボックス)でものを考え
なくてはならない、要するに固定観念を捨てよというわけだ。
私たちの考えはその正反対だ。イノベーションの数を増やし、その質とスピードを高めるためには、一定のヒナ型に
のっとって、勝手知った世界の内側で――つまり枠の中(インサイドボックス)、すなわち制約の中で――考えるべきだ。
思考を過度に無制約にすると、アイデアの無秩序状態が生まれ、革新的なアイデアを思いつく能力が弱まる。
本来なくてはならない材料や道具が手に入らなければ、知恵をはたらかせる以外にない。使える資源に十分厳しい
制約を課すことができれば、アイデアの無秩序状態に陥ることを防ぎ、限られた領域に生産的な思考を集中させられる。
●重要と思われていた要素を取り除く「引き算」の技法
成功を収めている革新的・独創的商品の半分以上は、たった五つのヒナ型のいずれかによって生み出されている。
その五つとは、「引き算」「分割」「掛け算」「一石二鳥」「関数」である。これらのヒナ型は、「体系的創造
思考法(システマティック・インベンティブ・シンキング、略してSIT)」と私たちが名づけたイノベーション手法の土台を
なすものだ。
■引き算
しばしば、革新的な製品やサービスはなんらかの要素を取り除くことによって生まれる。製品やサービスに
欠かせないとみなされていた要素を取り除くケースが多い。旅客航空サービスからさまざまな機内サービスを
引き算して生まれたのが格安航空会社、従来型のヘッドホンから耳カバーを取り除いたのがイヤホンだ。
引き算は、あるシステム(製品やプロセス)の重要な要素を取り除いてみるというテクニックだ。具体的には、
どういう要素を削除すればいいのか? 事例を見ると、取り除かれた要素は、最も欠かせない要素でもなければ、
最も些細な要素でもなく、その中間だった。そういう要素にねらいを定めたとき、最も大きな効果をあげられる
可能性が高い。
製品やサービスを改良するために、好ましくない要素を取り除くのは、ここで言う「引き算」ではない。製品や
サービスの性格を微修正し、機能の仕方を変えようとしているだけだ。また、引き算は、簡略化とは異なる。
簡略化のねらいは、製品やサービスの価値を下げることにより、低価格で提供できるようにすることにある。
簡略化のケースでは、新しい価値が生み出されていない。要素を削除(そして多くの場合は、その機能を
別の要素で代替)したあとに新しい価値が生み出されるのが、引き算のテクニックなのである。
■分割
既存の構成要素を分割し、一部を分離して用いるようにすることで、創造的な製品やサービスが生まれる
ケースも多い。たいていは、その要素を分離することが非生産的で非現実的だという思い込みを覆すことになる。
エレクトロニクス製品のリモコンは、操作機能を本体から切り離すことで利便性を向上させている。エクササイズの
ダンベルは、重りと持ち手を分割することにより、自在に重さを調整して筋トレに励めるようにした。
機能を維持した分割をおこない、一つの製品をいくつものミニチュア版に分割するだけで、画期的なイノベーションが
成し遂げられたケースも多い。コンピュータメーカーは長年、ハードディスク・ドライブの容量を増やし続
けてきたが、
あるとき、一人のエンジニアが素晴らしいことを思いついた。機能を維持した分割をおこない、個人向けの小容量の
記憶装置をつくってはどうかと考えたのだ。そうやって生まれた製品がUSBメモリだ。
また分割の方法は、製品だけでなく、サービスやプロセスなど、目に見えないものにも活用できる。
●無関係な複数の機能を一つの製品に同時にもたせる
■掛け算
このテクニックは、製品やサービスの一部の要素をコピーして増量し、その際、それまで無意味もしくは奇妙と
考えられていたような変更を加えるというものだ。わかりやすい例としては、子ども用の自転車に通常の車輪だけで
なく補助輪をつけたケースが挙げられる。スクリーンに複数のテレビ局の映像を同時に映し出せる「ピクチャー・
イン・ピクチャー・テレビ」は、画面の数を増量した大ヒット商品だ。
企業はしばしば、ライバルより魅力を高めようとして製品やサービスに新しい要素をつけ加えるが、「足し算」は
五つのテクニックに含まれていない。単に要素をつけ加えるだけでは、すべての要素の総和以上の効果は
生み出せないのだ。増量した要素に変更を加えることを忘れると、複雑性が高まるだけで、製品やサービスの価値が
向上しない。
■一石二鳥
製品やサービスの一つの要素に複数の機能(多くの場合は、それまで互いに無関係と思われていた機能だ)を
もたせることで、イノベーションが成し遂げられるケースもある。足臭対策用品の「オドイーター」ブランドから
かつて売り出された靴下は、足を冷やさないという機能と、足の防臭機能の両方を担った製品だった。
化粧品の乳液や保湿クリームに日焼け止め効果をもたせるのも同様の例だ。
インターネットで一部のウェブサイトにアクセスする際、画面に表示される奇妙に歪んだ文字列を読み取り、
そのとおりに入力するよう求められることがある。カーネギー・メロン大学のコンピュータ科学者、ルイス・フォンアンの
推計によれば、人々がこの種の文字列の解読をおこなう回数は、世界中で1日当たり2億回以上にのぼるという。
フォンアンはこの「キャプチャ」と呼ばれるシステムを発明した人物。これは、コンピュータプログラムがウェブサイトに
自動的にアクセスするのを排除し、ウェブサイトのオーナーや管理者がスパムやコンピュータウイルスをはね返すうえで
大いに役立っている。
実は、フォンアンは1日2億回の文字解読作業を利用して、ある目的を達している。世界中の書籍をスキャンして
電子化することをめざしているのである。既存のプロセスにもう一つの役割をもたせたという点で、これは
一石二鳥のテクニックの典型例とみなせる。
■関数
それまで無関係と思われていた複数の要素を連動させることによって、革新的な製品やサービスが生まれる
ケースも多い。一つの要素が変わると、それに合わせて別の要素も変わるようにするのだ。今日の自動車では
このテクニックが多用されている。雨の強さに合わせてワイパーの動く速度が変わったり、車のスピードに合わせて
ラジオの音量が変わったり、対向車が近づいてくると自動的にヘッドライトの光量が落ちたり、といった具合だ。
スマートフォンは、持ち主がどこにいるかによって、近くのレストランやお店、友達の居場所などを教えてくれる。
こうした情報と地理的な所在地は「関数」の関係にあると言えるだろう。
コメント: 日本の武道や茶道などにおける修行のあり方を表す言葉に「守・破・離」というものがある。
最初は師匠の教える「型」を守り、次にそれを応用して自分に合ったものにし、最終的には教わった「型」から
自由になる、という意味。 インサイドボックスの創造技法は、このうちの「破」に当たるものではないだろうか。
おそらく五つのテクニックをもとにした創造的思考を繰り返していくうちに、「離」の境地に達していくのだと思う。
すなわち、とくにヒナ型を意識しなくとも、アイデアが出てくるようになる。思考がショートカットできるようになると
いうことだ。創造的思考の達人になるための足がかりとして、本書の五つのテクニックはきわめて有効に使えると
いうことなのだろう。
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