このところ太平洋側は連日湿度の低いカラカラ晴天が続いています。
以前金沢にいた頃は、この時期 殆ど晴れ間が少なく、雨がちであったり、時にあられが降ってきたり
当時、“弁当忘れても、傘忘れるな” なんて言葉も聞かれました。
先日H氏から掲題の記事が配信されてきました。
そうであろうとは思っていましたが、より具体的な側面も含めて記載されていて興味がありましたので
ここにアップさせていただきました。
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The Economist 2013/11/9-11/15号(p67-68)
中国のオンラインビデオ市場 (Online video in China: The Chinese stream)
【要旨】中国のオンラインビデオ市場が盛り上がりをみせている。一般のテレビ番組が政府の厳しい規制を受けるのに対し、
オンライン番組への規制基準はあいまいなこともあり、サイトにはさまざまな種類の番組が並ぶ。
視聴者の興味がオンライン番組へ移りつつあるなか、著作権保護への意識が高まるなどの社会変化も起きている。
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中国のオンラインビデオ会社PPTVは、4人の若い女性たちが共同生活をしながらeコマース会社を立ち上げる
姿を追う、「The Goddess Office(女神事務所)」という名のリアリティ番組を今月後半にもスタートさせる
と発表した。視聴者は出演者に質問を送ったり、事業立ち上げの資金やアイデアを送ったりすることができる。
新番組では、アメリカのシチュエーションコメディ「フレンズ」のコメディ路線や、同じくアメリカ発のリアリティ番組
「アプレンティス」で出演者が見せる、勝ち残りのためのむき出しの野心といった、テレビ番組でおなじみの要素を
採用する。しかし、この「テレビ番組」は伝統的なテレビネットワークではなく、オンラインのみで配信される。
世界のオンラインビデオ市場はより大きく、より洗練されたビジネスになってきているが、中国市場に及ぶものはない。
中国国内のオンラインビデオ視聴者数は4.5億人、インターネット接続人口の約80%にのぼる。
業界を追跡しているiResearchによれば、その数は2016年までに約7億人に増加するという。
アメリカやヨーロッパでは、オンラインビデオは一般のテレビ放送や有料テレビに取って代わるまでには至っていないが、
中国ではその流れが急速に進んでいるようだ。 政府発表では、北京市内でテレビを見る世帯の割合は、
2009年の70%から2012年には30%にまで減少した。もっとも、常に公式の数字が信頼できるとはかぎらないのだが。
ユーチューブは中国からはアクセスがブロックされているが、国内動画サイトのYouku Tudou(優酷土豆)や
Sohu(捜狐)は広く人気がある。そこにはユーザーがアップしたコンテンツも多く含まれるが、ユーザーの大半は、
サイトが中国国内や世界中からライセンスを得て配信している全編映画やTVドラマ、コメディなど、プロが制作した
番組を見て時間を過ごしている。途中に挟まれる広告を我慢しさえすれば、視聴者は無料でいくらでも番組を見ることができるのだ。
中国におけるオンラインビデオサイト人気の背景には、テレビ業界に対する政府の厳しい規制がある。
3000以上ある放送局のすべては国有であり、番組は厳しく検閲されている。また、番組が公式の承認を得るには
数ヵ月かかるうえ、制作された番組のうちテレビ放映されるのはわずか3割程との推定もある。
対照的に、オンラインビデオサイトは、運営には政府の許可が必要だが、サイト内番組自体についての取り締まりは
警察当局の担当となっている。おそらくだが、政府はオンラインビデオにこれほどの視聴者が集まるとは想定して
いなかったのではないか。先月、政府は「シーヤンヤンとホイタイラン」という長年放送されている子ども向け
人気アニメの一編を、あまりにも暴力的であるとし、編集し直すよう命じた。 しかし、同じ番組を保有する
オンラインビデオ会社には同様の指導はなされなかった模様だ。
オンラインビデオ業界は中国においても広告収入に依存しており、大きく稼ぐのは難しい状況だ。
業界全体では昨年度90億元(約1500億円)前後の売り上げがあったものの、収益を出した会社はほとんどない。
コストが非常に高いのがその原因だ。多くのユーザーにコンテンツを配信するための帯域幅の確保、
またコンテンツのライセンス料に多額のコストがかかる。 その結果、業界内では合併が進んでいる。
昨年は最も人気のあるオンラインビデオサイトYoukuとTudouが合併した。5月にはインターネット検索の巨人
Baidu(百度)がビデオサイトのPPSを3.7億ドルで買収し、昨年買収済みのビデオサービスiQiyiと統合させた。
中国では著作権の扱いにも変化が見られる。オンライン番組配信企業のなかには株式市場に上場されたものもあり、
特に番組を自社制作するようになって以降、保護すべき知的財産を持つようになったことから、コンテンツの
ライセンス保護(海賊版対策)を真剣に考える風潮が出てきた。Youkuだけでも、数百の著作権訴訟が現在行われている。
評価がオンラインビデオに完敗しつつある中国のテレビチャンネルは、厳しい状況に追い込まれている。
欧米で成功した音楽オーディション番組やデート番組に倣った番組が、特に地方の衛星放送チャンネルを中心に
数多く放映されているが、要である中国中央テレビは視聴者を失い続けている。先月、当局は放送局数社に対し、
「下品」で「過激」な娯楽番組に注意を与え、より道徳的、教育的なものを放映するよう指導した。
音楽オーディション番組のいくつかは強制的に放送が禁止され、また、来年からは衛星放送局が放映できる
外国番組は年1番組に制限される。
こうなればますます、テレビ局の衰退とオンラインへの切り替えが進むだろう。中国版ツイッター微博(ウェイボー)には
「TVはもはや無用」「幸いなことに我々にはまだコンピューターがある」といった声が書き込まれている。
コメント: 中国のオンラインビデオには、これから革新的な番組が続々と登場してくるのではないだろうか。
せき止められた水が突破口を見つけると激しい勢いで吹き出すように、規制が厳しいテレビ業界に開いた
「オンラインビデオ」という抜け道からクリエイティブなパワーが一挙に放たれる可能性がある。制限があると、
それをなんとかして乗り越えようとする人々の力が発揮されることはよくあることだ。
もっとも、その勢いが目立ってくれば当然中国政府からの圧力がかかり、イタチごっこになることも十分考えられるのだが。
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このように見てくると、2011.2.25にアップしたブログ記事「ICTと民主化」を思い出されてきました。
関連部分を再掲します。
“すでに四半世紀近く過ぎた大事件ベルリン“ブランデンブルグ門崩壊”につながった底流に衛星テレビ放送が
あったと当時言われていました。 世界で起こっている事柄が相互に伝えられるとともに、自由で、活気あふれ、
楽しい映像は、統制下の人々に少なからず自らの現状に疑問を抱かせ、新しい欲望が増幅されてゆくのは
人間の自然な姿であるでしょう。” (中略)
ナポレオンとブランデンブルグ門
(ウイキペディアより)
“最近では、ネットで放送も見られますから、電波の届かないところまで、地球の反対側までも届けられる
ようになりました。 ですから、もう衛星テレビなどの比じゃなくなっているんです。おまけに、メールやfacebookなどの
ようなソーシアルネットワークでは、大勢の人が情報を交換し、共有し合え、「友達の友達はみな友達」式に
あっという間に情報共有範囲が拡大されます。” (中略)
“チュニジアで起こった大規模デモは、たちまちのうちにエジプトに・・リビアへと・・拡大されたのもこれら
情報ネットのなせる業であります。もちろんこれらの国では、それまでの圧政下の不満や問題が一気に爆発したと
考えられますが、それを短期間に可能にしたのはこのICTなんですね。 最近聞いたラジオで、このような政変は
次々と波及しているけれども、すぐお隣の国は、ICTが普及していない(させていない)から、しばらくは
政変は起こらないだろう・・といっていましたね。”
しかし、これすらもネットによるオンラインビデオなどによってじわじわと溶けはじめるのでしょうか?
長くなって恐縮ですが、今から32~3年前の話で、小生他2名連名で技術書を英文で英国から出版した
ことがありましたが、その2年後に上司が中国に出張した折に、この本の中国版(海賊版)が書店に並んでいる
のを見つけ、お土産に買ってきていただいた記憶があります。
著作権に対する認識は当時全くなかったのですね。