植物工場については、もう10年ほど前に、東京大手町のビルの地下に、人材派遣会社パソナが運営する
“パソナO2” が話題になりました。
現在も見学などが出来るそうですが、「アーバンファーム」として、新しいオフィスビルを目指した
活動が展開されているようです。 ビルの地下で、野菜などを栽培(水耕)するのです。
平成23年には、これを発展させて「株式会社パソナ農園隊」が設立されています。
パソナ農園隊HPより
いつもの、H氏から配信される記事に、この話題がありましたので、ここに取り上げさせていただき
ました。
冒頭の、パソナのアーバンファームの記事を見ていましたら、「農業検定試験」というのが、目に
入りました。
こちらは、一般社団法人全国農業観光協会が実施主体として、平成23年に第1回日本農業検定3級の試験が
実施され、以降毎年実施されているようです。現在では、第2級の検定も実施されているようです。
とくに資格などというモノではないようですが、興味のある方は、この際ご検討されてみてはいかがで
しょうか? 詳細は: http://nou-ken.jp/
このほか、日本農業技術検定というのもありました。 http://www.nca.or.jp/kentei/mondai.html
何時も前振りが長くて、なかなか記事に入れない恨みがありますが、植物工場について、10年前に
遡って思い出しますと、このような天候に左右されない手法を生み出した、人工的栽培の素晴らしさを
感じるとともに、本当の野菜が失われてしまうのでは、そこには季節感も、その野菜が有する栄養素
などがどのようになっているのか・・など、保守的な考えかも知れませんが、個人的には賛成しかねる
思いを抱いたのでした。太陽の下、自然の風、雨などの空気の中で耐えながら育つ貴重な生命力が失われる
のではないかと・・そんな心配でしたね。 しかし、先のブログ記事でも述べましたが、すでに、
殆どの植物のタネが“第1種交配”などのように、人工の手が加えられていることなどを考え合わせると、
もはや行く先は変えられない・・トータルコストの低減だけがそのモチベーションになっているのかも
しれません。
大変お待たせしました。以下に、配信記事をコピペさせていただきます。
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「植物工場:コンビニ、電機など相次ぎ参入システムの輸出を目指す動きも」
秋本 裕子(週刊エコノミスト編集部)
週刊エコノミスト(http://www.weekly-economist.com/) 2015年4月7日号 p104-106
【要旨】第一次産業である農業にも、確実に技術革新が進んでいる。とくに最新のコンピュータや
IT技術を駆使して屋内で野菜や果物を作る「植物工場」の設置が急速に全国に広がっており、海外輸出も
視野に入る成長産業として期待が寄せられている。本記事では、秋田県羽後町にある農業生産法人
「ローソンファーム秋田」の植物工場における現地取材を含む関係者への取材を通して、植物工場を
めぐる国内外の現状と展望をリポートしている。多業種が参入し、政府の規制改革も後押しする植物工場。
日本は世界トップクラスの技術力を有しているものの、まだまだ解決しなくてはならない課題は多いようだ。
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秋田県南部の羽後町に、コンビニ大手のローソンが地元農家とともに運営する農業生産法人
「ローソンファーム秋田」の植物工場がある。
工場内の閉鎖された部屋には、ベビーリーフが育っている。種をまいてからちょうど21日で出荷できる
大きさに育つという。十分に成長した葉は、隣の部屋で一枚ずつ丁寧にはさみで刈り切って手作業で選別する。
常時8種類ほど栽培しているベビーリーフの中から、6種類程度を袋詰めし、東北地方から関東の一部に
至る「ローソン」や「ローソンストア100」の計3,500店舗で販売している。1日3,000袋の生産は、
屋内の植物工場としては国内最大規模だという。
ベビーリーフとは、水菜、ターサイ、ルッコラなどの葉物野菜を幼葉のうちに収穫したもの。
食感のやわらかさや多品種、栄養価の高さなどから、ミックスサラダ用や付け合わせ野菜として近年、
人気が高まっており、スーパーやコンビニでも手軽に手に入るようになった。ローソンは、この商品を
ローソンの関東エリアでは一袋税抜き138円(東北は119円)で販売し、好調だという。
建物は、2008年まで小学校のグラウンドだった。真冬でも成り立つ産業の育成や雇用の創出を模索して
いた秋田県や羽後町と、季節を問わずに野菜を安定確保したいローソンの思惑が一致。廃校後の小学校
跡地の有効活用策にもつながるとして、秋田県や羽後町のバックアップを受けた。地元農家とローソンが
同法人を設立し、14年11月から出荷している。
羽後町は豪雪地帯のため冬には農業ができない。その点、「植物工場は冬でも安定生産できるため、
一つの産業として成り立つうえ、地域の雇用創出や地域活性化にもつながる」(ローソンの戸田孝一・
農業推進部関係会社担当部長)と期待を寄せる。
ローソンは生鮮食品強化や安定確保の観点から、北海道から九州まで全国23ヵ所(3月末)で
「ローソンファーム」を運営している。大根、ジャガイモ、トマトなどさまざまな野菜を生産し、
店頭販売用やおでんや弁当用の具材などに使用しているが、植物工場は秋田が初めて。ローソンは、
「ローソンファーム秋田の収益性などを検証し、今後の拡大も検討したい」(戸田氏)考えだ。
植物工場とは、ICT(情報通信)技術を使って、水、光、気温などを適切に管理・調節し、年間を通じて
計画的に植物を収穫できる園芸施設全般を指す。ビニールハウスで自然光を利用する「太陽光利用型
(太陽光型)」と、ローソンファーム秋田のように屋内や小型ディスプレー内で栽培する「完全人工光型
(人工光型)」に大別される。太陽光型では、農家が余剰農地を使ってトマトやパプリカ、花卉などを
栽培する事例が多いが、人工光型では農業とは無縁の異業種企業がレタスやベビーリーフなどの葉物野菜を
生産するケースが多い。
植物工場のメリットは、(1)季節や天候に左右されず、年間を通じて安定して同じ品質の野菜を
同じ量生産できる、(2)建屋の中で栽培するため害虫や病原菌の侵入がなく、農薬を使わないため安心・
安全である、(3)露地栽培に比べて栽培期間が短い、(4)狭い面積でも空間を有効活用して収量を
確保できる、などが挙げられる。消費者にとっても、植物工場の野菜は露地栽培に比べて野菜のえぐみが
少なく、野菜嫌いの子どもにも食べやすい、という利点がある。
ローソンに植物工場用システムを販売したのは、三菱ケミカルホールデイングス傘下の三菱化学。
同グループでは、水処理技術や太陽電池、LED照明、肥料製造なども手がけており、グループ内の関連
事業を生かす形で、12年に人工光型の植物工場に参入した。
三菱化学は09年、ドバイで植物工場によるベビーリーフ栽培の実証実験に成功、続いて12年にロシアの
プラスチック成形加工会社に、13年に香港の食品流通会社に、それぞれベビーリーフの植物工場システムを
販売した。国内でも、14年に兵庫県尼崎市の鉄道高架下で植物工場を手がける阪神電鉄に販売するなど
国内外での販売実績がある。
三菱化学植物工場事業推進室の真鍋彰宏グループマネジャーは、「中東のように水が少ない場所でも
安定的に生産でき、ロシアなど雪深い土地や、香港のように国土が狭く土地が少なくても、完全人工光型の
植物工場は有用でニーズはある」としたうえで、「食料問題のほか、土地活用や雇用などの地域問題の
解決にもつながる。今後、国内外でさらなる事業拡大を目指したい」と話す。
日本施設園芸協会のまとめでは、人工光型で一般に野菜を販売している植物工場は、09年3月末の
34ヵ所から15年3月末には185ヵ所と、6年間で6倍近くに増えた。背景には、安倍晋三政権が農業分野の
競争力強化を掲げて規制改革を進めていることのほか、消費者に食の安心・安全へのニーズが高まった
ことも後押ししている。矢野経済研究所は、人工光型で13年に33億9,600万円、太陽光型(併用含む)で
199億1,900万円だった市場規模が、25年にはそれぞれ443億3,800万円、1,056億9,000万円まで拡大すると
予測している。
三菱総合研究所の伊藤保主席研究員は、「大企業が大規模な植物工場を建て始めたのが最近1年の傾向」
と話す。特に目立つのは、電機メーカーが本業で培った水や空気の制御技術やLED照明などの技術を応用し、
植物工場に参入する例だ。富士通が福島県の半導体工場を植物工場に改変し、14年5月からレタスの
生産・販売を始めたほか、東芝が14年9月、横須賀工場の一角の使用していなかったクリーンルームを改良し、
植物工場を稼働し始めた。
パナソニックは14年8月から、シンガポールの外食企業向けに植物工場で栽培した野菜の生産・販売を始めた。
シャープもアラブ首長国連邦(UAE)でイチゴの生産に乗り出した。
だが、「まだ課題が多い」と三菱総研の伊藤主席研究員は言う。その課題の一つがエネルギーコストだ。
特に人工光型は光や空調、養液ポンプなどのエネルギーの大半を電気で賄うため、エネルギーコストが重く
のしかかる。
植物工場の先進国であるオランダは、広大な農地に太陽光型植物工場を整備して、高い生産効率を
維持している。オランダの強みは植物工場プラント、ソフトウエアなどのシステム、周辺機材、種子、
植物の販売方法までをパッケージ化して輸出していることだ。
日本は、特に人工光型では世界トップクラスの高い技術力を持つ。そのため政府は、野菜だけでなく
植物工場システムも輸出産業に育てたい考えだ。だが、日本はメーカー各社が独自規格の製品を販売している。
伊藤主席研究員は「海外輸出しようにも、一部設備を売るだけという“点”での展開になり競争力が弱い。
今後は、単に個別企業の取り組みを支援するだけではなく、国による総合的な戦略の構築が求められる」と
話している。
コメント: 植物工場に大きな可能性が感じられるのは、さまざまな「応用」のプラットフォームに
なっているからだと思う。電機メーカーが他の製品開発などで培った技術を「応用」する。既存の工場の
施設を「応用」する。廃校になった小学校の跡地の利用も、「応用」の一つといえる。課題の一つに
挙げられているエネルギーコストに関しても、再生可能エネルギーなどの「応用」が検討されていくこと
だろう。多業種がそれぞれの強みを持ち寄り、植物工場のために応用していくことで、思いも寄らぬ新しい
展開が生まれる可能性がある。そのためには、行政をはじめ、我々の中に根強く残っている縦割り意識を
払拭し、柔軟性の高いシステムをつくっていく必要があるだろう。 Copyright:株式会社情報工場