2014年の大晦日(最後の日)、昔のようにバタバタと忙しい晦日風情はありませんが、何となく気忙しい感じも
ないではありません。そんな日に、どのようなブログ記事をアップすればよいか? なども、チラッと頭をよぎりましたが、
ことさらに構えることもありませんし、たまたま、先日、いつものH氏からの配信情報の中に、掲題の記事が
ありましたので、 ちょっと俯瞰的な視点での内容で、大きく捉えた近未来的な話題ですので、ここに取り上げてみました。
地球温暖化によって、いろいろと大きな問題が生じるのですけれども、ここに述べられたような側面もあり、
手放しで喜べないわけですけれども、それはそれなりに活用されるべき資源や新しい交流が生まれるなどの
潜在力に満ちているのですね。
既にご存知のことで、敢えて述べることもありませんが、北極圏について簡単に述べておきたいと思います。
(ウイキペディア他を参照しました。)
北極圏(Arctic Region)は、北緯66度33分以北の地域であり、北極圏の限界線となる北緯66度33分線を
北極線(Arctic Circle)といいます。 北極圏では真冬(冬至)に太陽が昇らず(極夜)真夏(夏至)に太陽が沈まない
(白夜)ことはよく知られた事柄ですね。
北極圏
(ウイキペディアより)
また、外務省HPの関連部分にも、ここで述べられている内容についても記述がありましたのでここに引用しました。
「近年,北極に関する大きな話題の一つは,海氷面積の減少です。地球温暖化の影響で,1978年以降,
北極海の氷は10年で平均2.7%縮小しています。 また,北極の観測データに基づく研究によれば,北極海の
氷の減少は今後も続くと予想されます。 北極海の氷の減少に伴い,北極海航路の利用増加や資源開発という
新たな可能性が広がってきました。一方で,環境問題など,新たな課題も浮上してきています。」
北極圏氷海状況(IJISページより)
(線の外側から1980、1990,2000年)
「北極海航路と呼ばれているルートには,大きく分けて二つあります。一つは,カナダ寄りの北西航路(図表:緑色),
もう一つはロシアの沿岸を通る北東航路(図表:紫色)です。これらの北極海航路が開発されれば,例えば横浜から
オランダのロッテルダムまでの運行距離は,スエズ運河経由ルートの約6割となり,大幅な短縮が見込まれます。
ただし,北極海の航路は深度が浅く,氷結した部分が多いため,輸送船の衝突や座礁事故の可能性が高くなること,
そのため輸送船には砕氷船の随行が必要になること,また依然として運航は夏季が中心であり,通年の定期化は
難しいということも,北極海航路の利用の際の課題として挙げられます。」
その他、ここで取り上げられている、最重要である “資源” についても言及されていますので、さらに追及されたい
方は、こちらを参照されることをお勧めします。
では、掲題の配信記事を以下にペーストします。
******************************
北極圏:次の新興地域 (The Arctic: the next emerging economy)
By Sturla Henriksen Dialogue DEC/FEB 2014/2015号(p86-90)
【要旨】これまで謎のベールに包まれてきた北極圏が、成長市場となるポテンシャルを秘めた「次の新興地域」として
世界の注目を集めている。地球温暖化の結果生じた氷の後退により、北極圏に眠る手つかずの石油、ガスや鉱物
といった天然資源の存在が明らかとなり、周辺各国の関心が高まっているからだ。今後、ビジネスが活発化する
この地域においては、利害の衝突を回避し、合法的で安全な活動を続けるための枠組みや、広範囲におよぶインフラの
整備、持続可能な環境保護への取り組みが喫緊の課題となる。そのためには利害関係国の協働が不可欠だ。
本記事では、協働のイニシアティブをとり、2015年に北極圏リーダーシッププログラムを立ち上げるノルウェー船主協会
(NSA)のCEOが、北極圏での活動の現状と長期ビジョンについて語っている。
------------------------------------------------------------
かつては氷に覆われた荒れ地にすぎなかった北極圏だが、今や専門家の間では「次の新興地域」と呼ばれるほどの
成長市場として注目され始めている。 経済、政治協力の玄関口としても期待されており、2015年3月には、
NSA(ノルウェー船主協会)、「DNV GL社」(ノルウェー・オスロに本部を置く石油・ガス分野のリスクマネジメント、
船級協会、第三者認証機関などの業務を行うサービス・プロバイダー)、ならびにDCE(デューク・コーポレート・
エデュケーション)が提携し、世界初となる経営幹部向けの北極圏リーダーシッププログラムを立ち上げる。
周辺8ヵ国が共有する北極地域については、近年の気候や環境の変化により地政学的、また商業上の論争が
巻き起こっている。しかし、北極圏外に住む人々は、この辺境で何が起きているのかほとんど知らない。
極地の氷冠が融解し後退しつつあるのだ。北極圏はアフリカとほぼ同じ大きさで、三つの大陸がその頂点で
交わっている。この地には、以下に挙げるような地球的課題の上位3項目が集中している。
(1)地球温暖化の結果、北極の氷が融解し、北極圏の温度が他の地域の約2倍の速度で上昇している。
このことが、世界の気象パターンや空気の流れに影響を与える可能性がある。
(2)氷が後退することで石油、ガス、木材、魚、希土類金属および鉱物を含む天然資源がむき出しになれば、
商業的に開発されることになる。アジアとヨーロッパをつなぐ近道ができれば、北極圏への航海距離は3分の1にまで
減少する。ここで、地球温暖化により気候変動のペースが加速する一方、航海距離が短くなるため海事産業の
燃料コストが削減できる、というパラドックスが生じる。
(3)北極圏は天然資源を有することで成功をおさめ、世界貿易に変化をもたらす推進力を得る。このことが、
地政学的な力の均衡を変える可能性がある。
こうした背景があるために、11ヵ国が北極圏での国益を調整するための北極大使を任命している。
北極圏には、その定義にもよるが400万から500万人の人口があり、トロムソやムルマンスクといった比較的
規模の大きな都市もある。アメリカ地質調査所の推定によると、北極圏には地球上でまだ発見されていない石油の13%と、
ガス資源の30%が存在する。また、世界最大級の水産資源と淡水貯水池を有するとともに、世界有数の木材や
レアメタルの産地でもある。
北極圏では、さまざまな活動が活発化している。沖合の石油およびガスの開発、クルーズ船の寄港、地域の海運業
のみならず、氷の後退による海水温の上昇によりノルウェー海から魚が回遊するため、漁業も活性化している。
加えてメディアは、北極を横断する航路に大いに注目している。北極海には、(1)北部ロシアの海岸に沿って
航行する北極海航路、(2)極地横断航路、(3)グリーンランドからカナダ沿岸を航行する北西航路という三つの
航路がある。北極海を通過する商業航海は、2008年の4本から、2013年には71本にまで増えた。
現在、商業航海のほとんどがロシアの経済圏で行われている。これはロシアというもう一つの課題があることを
意味する。適切なインフラと、安全・安心かつ持続可能な方法での商業活動の増加を確保するための規制措置が必要だ。
また、国や政治家のための情報だけでなく、企業の意思決定やビジネスに役立つ情報も増やす必要がある。
ビジネスを行う企業には、北極圏における持続可能な開発に貢献する責任もある。合法的に業務を遂行すること、
そして商業活動に必要なライセンスの維持を保障するための規則と条件を定めることが、企業の真の利益につながる
といえる。
それゆえ、これからの北極圏では、規制の枠組みと、利害関係者間の協働が必要になる。ベルリンの壁の崩壊以来、
北極圏では大規模な協力が行われてきたが、ウクライナ情勢や、EUと米国がロシアに課した制裁が、貿易関係の船舶や
沖合の石油・天然ガス方面の商業活動に影響を与えている。北極圏での開発を支援するための規制措置や、
通信、運行指示、氷の監視、正確な天気予報、捜索救助、補給と整備といった広範囲のインフラ整備の先行きが
不透明になっているのだ。
ロシアとノルウェーの両国は、この地域で互恵的信頼関係を築いてきた。2010年に正式に締結された海洋境界
画定条約と、バレンツ海および北極海における両国の協力に関する条約に、その関係性が顕著に表れている。
国境地帯に住む人々が両国間を自由に往来することも、数十年にわたり許可されていた。また、軍事分野における
関係も深く、二国共同の軍事演習も行われている。だが現在では、このようなロシアと各国との二国間関係が、
北極圏における課題解決に必ずしもつながっていかないことが懸念されている。
人口は少ないものの、ノルウェーには極地の伝統が強く残っている。また、現在、ノルウェーは世界で最も大きな
海洋国家の一つであるとともに、世界最大かつ最先端を行く海運国でもある。北極海で行われている活動の80%が
ノルウェーの海域を舞台にしたものだ。ノルウェーには、北極のさらなる開発を進められる力がある。そして、
それと同時に、開発の持続可能性に対し責任を負っている。
以前から北極圏で稼働しているノルウェーの企業は、同地の開発について熟知している。だが、新たなビジネス
チャンスや投資を検討する企業、この地で何が起こっているかをよく理解していない企業には、情報を行き渡らせ、
安全で持続可能な方法で操業するための課題と前提条件を分かってもらう必要がある。
NSAと「DNV GL社」が提携したのはこのためだ。今年10月に初めて開催された北極ビジネス協議会ならびに
北極ビジネス評議会では、企業幹部が一堂に会して、諸問題について話し合う場を提供した。協議会では、
産学官が連携し、互いの知識と能力を交換し合うことが必要とされた。今後は北極圏の現況への理解と、意識を
高めるための知識、対策、対応面でのベストプラクティスを共有することも必要となる。
これからは、北極圏への新規参入を狙う企業や、ビジネスチャンスを模索する企業が増えてくる。そのためにも
優れた教育が必要であり、北極圏リーダーシッププログラムはタイムリーかつ緊急の必要性に対応しているといえる。
問題は、会議が乱立しているものの、それらの代表者の大半は公共部門の関係者であり、実業家がほとんど
いないことだ。実業家は、莫大な関連知識と経験を活かし、投資判断を下し、さまざまな決定事項を調整する。
実行可能な解決策を生み出すのはこうした人々だ。彼らのビジネス上の利害と社会貢献は、必ずしも一致しないが、
北極圏リーダーシッププログラムには議論しながらそのバランスをとっていくことが求められている。
必要なのは、全体像を見て取り組むための総合的な視点だ。われわれNSAは、対話を重視して、利害関係者間の
連携をつくっていかなければならないと考えている。
コメント: 北極は、地球全体のサステイナビリティを維持するうえで重要な役割を果たすと思われる。したがって、
利害関係国間のより良い協働態勢を整えることは、関係諸国のみならず、人類全体の行く末にも影響するきわめて
重要なキーポイントになるに違いない。そのイニシアティブを、平和と人権の国というイメージの強いノルウェーが
とることの意義は大きい。そしておそらく、その協働・連携は、変化する国際情勢をにらみながら進めるこ
とになるため、高度な調整能力が必要となる。ノルウェーのみに任せるのではなく、全世界的な協力態勢が必要と
なるのかもしれない。 Copyright:株式会社情報工場
アラスカのオーロラ
(ネット画像)
今年一年お付き合いくださいまして、誠にありがとうございました。