牧水まつり
国道292号を六合村までさかのぼり、応徳温泉の手前から暮坂峠を越えて中之条町に至る山道がある。
昨日(10月20日)は、この暮坂峠の詩碑の前で『牧水まつり』があるというので出かけてみた。
一昨日までの雨がやんで朝から快晴になったのと、大鍋で炊いたなめこ汁が振舞われるとの宣伝に乗せられて峠を目指した。
午前11時からの式典には、主催の『牧水詩碑保存会』のメンバーをはじめ、草津、六合、中之条の町村長を来賓に、それぞれの観光協会からも役員が参加してなかなかのイベントとなった。
われわれのような野次馬も結構来ていて、詩吟やコーラス、それにギターと尺八の合奏が見事な地元シンガーの歌を聞いて、秋のひと時を楽しませてもらった。
待ちに待ったなめこ汁は、期待以上の美味しさだった。なめこも好いが、豆腐が格別の味で、薬味の刻み葱を浮かべた手づくり味噌とあいまって、参加者の多くが満足したことだろう。
詩碑と道路を隔てて、野菜や漬物、花まめ餡の饅頭、草木染の布などを売る即売所も開設され、品切れになるほどの盛況だった。
添加物など一切使わない本物ばかりだから、食品にうるさくなった主婦たちが喜んで買っていったらしい。
おっと、これでは牧水さんそっちのけで申し訳がたたない。うろ覚えだが、少々説明しなくてはなるまい。
自動車のない時代に、たしか沼田のあたりから吾妻渓谷沿いの道を中之条まで出て、そこから浅間の麓まで行ったという紀行文を読んだ記憶がある。
道中草津にも寄ったんだろうね。暮坂峠は行きだったのか帰りだったのか。沢渡、四万、川原湯などにも立ち寄ったのだろうか。
酒と旅と温泉が好きな自由人だからと、勝手な想像に基づいていろいろ書いたが、ここに当日もらった若山牧水の詩を転載して罪滅ぼしとする。
(今気がついたが、この詩では草津から沢渡方面に越える道順になっている。となると帰りだったのか。あるいは別のときにも吟行を試みたか。はっきりしないので、いずれ調べてみる必要があろう)
「枯野の旅」
乾きたる
落ち葉のなかに栗の実を
湿りたる
朽葉がしたに橡の実を
とりどりに
拾ふともなく拾ひもちて
今日の山路を越えて来ぬ
長かりしけふの山路
残りたる紅葉は照りて
餌に飢うる鷹もぞ啼きし
上野の草津の湯より
沢渡の湯に越ゆる路
名も寂し 暮坂峠
(本来、旧字を使用すべきだが、こんなところでご容赦を)
*写真も撮ってあるのですが、新規のパソコンで「縮小専用」のダウンロードを拒否されてしまって、当座の間に合いません。いずれ機能が整ったら掲載します。
*その後、ダウンロードができましたので、遅ればせながら画像を挿入します。
なめこ汁と、かの牧水の詩、ごちそうさまでした。
山間部で、真のなめこ汁を啜る美味さ、ひたひたと伝わってきましたよ。ことさら豆腐が良かったとは、想像に難くありません。
そんな地で「牧水まつり」がひっそり(失礼!)催されているなんて素敵ですね。
そして、その詩を引用してサービスしてくれた筆者の姿が、山道を歩いてきたときとダブって想起されました。