ベルツの森を垣間見て
六合からの道を登りきったところが草津との境界だ。
視界が急に開けたところで、白根の山々を望むことができる。
実は前日北軽井沢へ来たときは、季節はずれの雪に見舞われた。浅間は一日で雪の厚化粧を施された。
白根もまた谷筋の雪がはっきりと見える。北アルプスほどの威圧感はないが、標高の高い草津から見ても頼りになる兄貴のような存在だ。
山のふもとの赤い建物は、おそらくベルツの森の施設だろう。
こうして見ると、湯畑を中心にした温泉街はほんの一部に過ぎず、草津の町も樹海の真っ只中に人が作ったうたかたの城に見えてくる。
連休の最初の日曜日だったが、前日の空模様のせいか観光客の出足は鈍いようだ。草津では無料の立ち寄り湯が楽しみだから、客が少ないのは歓迎だ。
共同浴場だけでも18箇所在るそうだから、分散するのかもしれないが。
飛び切り熱い千代の湯か、浴槽の広い巽の湯か迷ったが、ゆっくり浸かれる巽の湯に入ることにした。
ほとんど貸切り風呂みたいで、仕事と運転で凝り固まった手足を思い切り伸ばすことができた。
余談だが、むかし草津で温泉宿を営む人々は、厳しい寒さを避けて冬の間だけ六合村に居を移したという。
村の中心部に残る『冬住みの里』は、当時の文物の資料館になっている。
先ほど草津まで登ってきた山道も、厳寒期には閉ざされていたのかもしれない。
思えば野反湖への道は、今でも冬季に限り通行禁止になっている。
里山、暮らし、習俗、風景。・・・・そろそろ写真も尽きたので、六合村から草津への走り抜けレポートを終了することする。
いやいや数々の写真と、心優しい文章を楽しませてもらいました。
究極的な感想は「日本っていいなあ」です。
六合村にせよ、草津近辺にせよ、ヒトは出演していないようですが、その裏面からヒトの息遣いが伝わってくるような……。ポツンとある桜にも、その家のひっそりとした佇まいの裏に、家族の幸せが秘められていたり、道端の盛大な鯉のぼりには、育つ子を持つ親の歓喜がしのばれるようだし……。遠望する白根山の懐にも赤屋根のなかでの、さんざめきが聞こえてくるようだし……。
そんなことを想ったりしているうちに、「日本も捨てたものじゃない」となるのですが、世間一般ではこういう里を見捨てられた地とでも思われているのでしょうかね。それならそれでいいんですが。
ただ、世間一般並みにこれ以上、ヒトの手で壊されたり、変えたりしてほしくないんですよね。そっとそのままにしておいてこそ、そこの人々の静かな幸せな暮らしが保たれるのでしょうから。
それにしましても、行き交う車もないような田舎町を縫うドライブ、うらましいですね。
里山に抱かれた人の暮らしが見える写真、とても穏やかな気分で拝見しました。
自然と人が適度の折り合いをつけての暮らし・・・これこそ日本人の自然観の最良の部分なのでしょうね。
今は開発するとなると根こそぎ自然を破壊して、便利になったなどと嘯いている状況を誰も訝らなくなったようで、人間の内面が壊れているのでしょう。
いやだね。
地域の住民の皆さんが出て清掃をしたり、危ないところを整備したり自分たちが住む場所を大事に大事にして。
そこに生まれその土に帰ることを自明のこととして生きる安心感は、人を謙虚にし心を豊かにするのでしょう。
道端に植えられた花や庭先から通る人を慰める桜の花に人生のゆとりと膨らみを教えられます。
その道を通らせていただく窪庭さんのしあわせっが伝わってくるような写真の数々でした。
ありがとう。
知恵熱おやじ