「今日の打ち合わせですが、午後3時頃に心斎橋辺りでしたいのですが、どうでしょうか?」とクライアントであるK社のNさんから早朝にお電話を頂きました。
「土曜日もご出勤ですか。僕は構いませんが、それならいっそ道頓堀の食いだおれ太郎の前にしませんか?」
「ああ、そうですね、最後に見ておきましょうか。」
ということで少し前の時間に行ってみると、予想通り黒山の人集りで道が塞がれる状態になっており、無事に落ち合えるかと心配になるほどでした。
「無くなるとなると、やはり気になるものですね。」とNさん。確かに僕もこれまでは何気なく見て通るだけでした。
食いだおれ人形の一連の話題で感心したのは、先代のご主人が店のシンボルとして彼を作った時のエピソードの中で、彼が人気者となってもマスコミ取材や写真の掲載などで、一切の報酬を受け取らないという決まりを家訓のように守ってきたということです。そういうことも加わって彼が世間から可愛がられると、自然にお店も繁盛するという考えを持たれていたそうです。今回の閉店騒動の報道やイベントへの無料貸し出し、そして記念の写真集の収益金も四川大地震に寄付されると聞きました。
キャラクターという今日的な概念も無い時代に、一つのお店のシンボルを超えて道頓堀、そしてみなみの顔としての存在をも意識していたかも知れない先代の思いに、僕らも学ぶべきところは多いのではないかと思います。
※ 人形の横で写真を撮っている人は、写真集のカメラマンではないかと想われます。