以前から読んでおきたかった阿久悠さんの最初の著書でもある『作詞入門』(1972年初版)を買いました。阿久悠さんと言えばGS(グループサウンズ)時代の終わり頃から、シンガー・ソングライターが主流となっていった80年代までの長きにわたり、幅広いジャンルで日本の「歌謡曲」を支えてきた巨星のような作詞家の一人です。
想えば僕の音楽キャリアに重なる時代の制作側にいて、多くの影響を呼吸のように意識することもなく受けてきたはずの作家が、その最盛期にどのような方法と想いで作品を産み出してきたのか、その裏エピソードなども興味深くてあっと言う間に読み終えました。
現代で言えばAKB48を総合プロデュースしている秋元康さんが想い浮かびますが、その企画性やマーケッティング的な手法、そしてテーマの幅広さまで似ているように想います。阿久悠さんが広告代理店でのCMライターやテレビ映画制作に続き、音楽番組の放送作家として後に「スター誕生」で多くのアイドルや歌手を生み出すことなど、2人には同じような発想や才能を感じます。
阿久悠さんは自発的に作品づくりをするということではなく、レコード会社や音楽出版社などから作詞を依頼された歌手・タレントが先ずいて、どのような戦略や作品にするかということで多くの仕事をしています。そのような中で「アメリカのように一つの作品が先ずあって、それを誰が歌うかというシステムが日本にはまだ無い」と言われています。そして「いずれは作品というものが先ずあって、それを歌うタレントが20人も30人もいるといったように変わっていくのではないか」と予想しています。
果たしてこの本が書かれてから40年近く経ち、現在の歌謡界は阿久悠さんが夢見たようになっているのでしょうか。
※ 鴨下信一(演出家)さんの文庫版解説も、同世代の証言としてとても面白い読み物となっています。
![]() | 作詞入門―阿久式ヒット・ソングの技法 (岩波現代文庫) |
クリエーター情報なし | |
岩波書店 |
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