伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。今年も目標達成!

建材・設備はどこで何から作られているのか

2008-12-14 21:55:55 | 人文・社会科学系
 一級建築士が、自宅を建てた際に、使った建材・設備はどこでどのように作られているのかに好奇心を持って調査したレポート。
 様々な意味で、好奇心をそそられるテーマです。特に石膏ボードに用いられる石膏が、今では公害防止のための排煙脱硫装置の稼働の副産物がほとんどという話(110~113頁)には興味を引かれました。
 ただ、その話も含めて、建材や設備がリサイクルの原料をこんなに使っているということが強調されていて、それはそれで、だから建材の使用に良心の痛みを感じなくていいよという感じがまた気になります。取材したメーカーがダイオキシン発生の測定値を偽っていたとかダイオキシンガス漏洩の事故を起こして後で問題になったというエピソード(188頁)が教訓的です。
 減価償却の終わった機械を大事に使って1人の作業員で多くの工程を管理すれば海外生産にしなくてもやっていけるという話(170頁)も、経営者側にはなるほどとうならせる話でしょうけど、労働者側の負担はずいぶんと大変だろうなと思ってしまいました。


内田信平 エクスナレッジ 2008年9月30日発行
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宇宙を孕む風

2008-12-14 21:49:39 | 小説
 福岡の中規模高校受験塾のずるくなりきれない熱血経営者が進出してきた大手との競争の中であれこれ悩む姿を、アルバイト講師として手伝う大学生の従妹の視点から描いた小説。
 タイトルの「宇宙を孕む風」はオーロラのこと(オーロラを起こす太陽風のことでしょうね)。ストーリーとはほとんど関係ないですが、宇宙の、長期の地球温暖化などのできごとの深刻さから考えれば日常のことはささいなことだけど、でも人間は特定の誰か好きな人を通じてしか世界を感じることができない、出会いと別れの日常でしか生きられないというようなことを語らせるためのシンボルです。「世界の中心」がエアーズ・ロックだと言われたときの落胆・違和感・驚きと比べれば、言葉から予想される意味通りで、まぁそうかなとも思いますが、学習塾の熱血経営者と地球温暖化を並べて、それも地球温暖化をさらに広大で幻想的にするためにオーロラを持ってこなくても、とタイトルの謎がわかったときに思いました。
 学習塾の熱血経営者の思いは共感できるのですが、出てきた問題は、結局決着をつけられずに、語り手の心の整理だけで終わってしまいます。問題は果てしなく生成して、気の持ちようで折り合っていくしかないということかも知れませんが、小説としてはそれなりの決着をつけて欲しかったと思います。


片山恭一 光文社 2008年11月25日発行
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