遠藤曲馬団の曲芸師で動物飼育係だった武井丈吉が、30人そこそこの見物人を相手にするのは飽きて、金持ちの物を盗む見せ物をしようと怪人二十面相となり、明智小五郎とライバルとなって競うが、気球で脱出する際に小林少年が乗り込んで気球を銃で撃って気球が爆発してその後行方不明となるまでを、丈吉と遠藤曲馬団での弟子だった遠藤平吉らの視点で描いた小説。
二十面相の側から、富豪から盗むことの美学を描き、明智小五郎の欲と悪知恵、子どもを使えば手を出せまいという少年探偵団結成の狡猾さを批判的に描いています。サーカスの団員の視点ですから、貧民の立場から、多くの民を飢えさせ、空襲で死亡させた政治の誤りが指摘されます。ただ、それでも怪人二十面相については、貧者の怒りではなく、あくまでも個人的な美学が強調され、そこは直線的ではないのですが。
映画「K-20」の原作とされていますが、少なくとも、ここまでは全然別の作品です。映画で登場するのは、一番最後の「ノガミ」(上野)のバラックで死にかけた子どもを養うために食べ物を持ち帰る子ども(この子どもが「葉子」!)のエピソードくらいです。続編の「怪人二十面相・伝Part2」では平吉が修行して怪人二十面相を継ぐという話のようですから、映画に近づくかも知れませんが(読んでませんからわかりませんが)。
映画よりは、庶民目線を感じる小説です。
北村想 小学館文庫 2008年9月10日発行 (単行本は1989年)
二十面相の側から、富豪から盗むことの美学を描き、明智小五郎の欲と悪知恵、子どもを使えば手を出せまいという少年探偵団結成の狡猾さを批判的に描いています。サーカスの団員の視点ですから、貧民の立場から、多くの民を飢えさせ、空襲で死亡させた政治の誤りが指摘されます。ただ、それでも怪人二十面相については、貧者の怒りではなく、あくまでも個人的な美学が強調され、そこは直線的ではないのですが。
映画「K-20」の原作とされていますが、少なくとも、ここまでは全然別の作品です。映画で登場するのは、一番最後の「ノガミ」(上野)のバラックで死にかけた子どもを養うために食べ物を持ち帰る子ども(この子どもが「葉子」!)のエピソードくらいです。続編の「怪人二十面相・伝Part2」では平吉が修行して怪人二十面相を継ぐという話のようですから、映画に近づくかも知れませんが(読んでませんからわかりませんが)。
映画よりは、庶民目線を感じる小説です。
北村想 小学館文庫 2008年9月10日発行 (単行本は1989年)