伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

野菜畑で見る夢は

2009-09-22 15:22:52 | 小説
 大企業を辞めて故郷に帰って小学校教師をするという彼(川口)のプロポーズを断り東京のコンピュータ関連企業の広報部に勤め続けていたが同窓会で再会して遠距離恋愛を続けるまゆみ、まゆみの妹で個性的なために彼ができなかったがお見合いでパンクの商社マンと知り合い恋愛中の内装アーティストこのみ、川口先生の教え子の小学5年生花憐と死んだ夫に手紙を書き続けるその母の3組を絡ませながら、野菜を登場させて恋愛エピソードを綴る短編連作。
 深刻な話、暗い話はオフ・リミットで、一途に純真に1人の人を思い続けることの尊さと幸せが語られています。今は天国にいる夫の台詞「幸せっていうのはね。実に単純明快で、わかりやすくて、誰の手にもすぐ届くところにあるんだよ。近過ぎて、かえって見えにくくなっているのかもしれないくらい。」(31ページ)が全体を象徴している感じです。明るくほんわりしたいときに読むにはいい本です。
 作者名を隠して読まされたら野中柊の本かとも思ってしまいますが。


小手鞠るい 日経BP社 2009年3月16日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

渇いた夏

2009-09-22 13:07:13 | 小説
 伯父が死んでその遺産を相続した興信所調査員神山健介が、スナックのホステスに頼まれて迷宮入りしている6年前の妹の殺人事件の真相と犯人と目される20年前に失踪した友人の所在を調査するうちに、14年前の別の殺人事件、さらには伯父の死の真相をめぐる謎に行き当たるというストーリーのミステリー。
 ミステリーとしては、謎がすぐ解けたかのように書かれて、拍子抜けさせてその後にどんでん返しを用意する意図が見え、そのどんでん返しがちょっとした違和感にこだわって読んでいるとだいたい見えてしまうのが残念。
 一連の事件のほぼ起点となる/小説としても最初に登場する8歳の少女のレイプ事件の被害者真由子が外側から得体の知れない存在と描かれ続け、結局その心情が描き切れていない感じがする点に不満が残ります。もっともそれを描ききったら娯楽小説として読めなくなるでしょうけど。
 謎解き自体よりは展開の高揚感を娯楽として楽しむ読み物だと思います。
 月刊誌連載のせいでしょうか、年号表記が西暦と元号が入り交じっています。加筆訂正するときはこういうの統一しておいて欲しいなと思います。


柴田哲孝 祥伝社 2008年12月20日発行
月刊「小説NON」2007年11月号~2008年10月号連載
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする