新田次郎作「劔岳 点の記」のリメイク版。明治40年、前人未踏の山とされていた越中劔岳に登頂し一帯の三角点を整備することを命じられた陸地測量部測量官柴崎芳太郎が、部下や現地の案内人らとともに苦心惨憺しながら初登頂を果たすまでを描いた小説。
メインストーリーは難関の劔岳をどう攻略するかの登山ものなのですが、読み物としては柴崎と上司・部下の関係、民間人の山岳会に初登頂をされては恥という陸地測量部の意地、行政官としての柴崎のプランニング、役人根性丸出しの富山県庁土木課のさや当て、遥か昔に修験者が登頂していたことを知って途端に無関心となる上司、山頂の物理的制約から三等三角点がおけず公式記録が残せないことへの落胆など、「役所」を描いた部分が多くあり、そちらの方が印象的です。
登山の苦労がさんざん描かれた後だけに、他人がどんなに苦労しても役所の前には・・・という感じです。役所が認めてくれなくても、役人に意地悪をされても、自分たちは自分たち、胸を張って生きよう、そう思わないと・・・そういう読後感です。

山本甲士 文藝春秋 2009年3月25日発行
メインストーリーは難関の劔岳をどう攻略するかの登山ものなのですが、読み物としては柴崎と上司・部下の関係、民間人の山岳会に初登頂をされては恥という陸地測量部の意地、行政官としての柴崎のプランニング、役人根性丸出しの富山県庁土木課のさや当て、遥か昔に修験者が登頂していたことを知って途端に無関心となる上司、山頂の物理的制約から三等三角点がおけず公式記録が残せないことへの落胆など、「役所」を描いた部分が多くあり、そちらの方が印象的です。
登山の苦労がさんざん描かれた後だけに、他人がどんなに苦労しても役所の前には・・・という感じです。役所が認めてくれなくても、役人に意地悪をされても、自分たちは自分たち、胸を張って生きよう、そう思わないと・・・そういう読後感です。

山本甲士 文藝春秋 2009年3月25日発行