伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

真昼なのに昏い部屋

2011-03-07 08:23:20 | 小説
 貞節で従順な人妻澤井美弥子が、大学教員のアメリカ人ジョーンズとフィールドワークといいながらデートを続けるうち心ときめかせるようになり、妻のいうことの半分も聞いていない夫との微妙にすれ違う日常に飽き足らなくなり、夫の下を去るという専業主婦の精神的自立ストーリー小説。
 語りは、ジョーンズが主人公のようになされていますが、実質は、美弥子が主人公と読めます。
 特に横暴ということはないけど自分本位で妻の話をいい加減にしか聞いていない夫が、親密にお話する別の男に心惹かれまた目を開いた妻に見放されるパターンで、まぁ仕方ないのかなとは思うものの、その妻が何一つ経済的な裏付けを考えていないことや、相手の男が完璧な紳士と紹介されていますが次々と女性に手を出し続けてるってあたり、中年おじさんの目からは納得しがたいものを感じます。
 ジョーンズは、筋肉主義者(マチスト)が嫌いと描かれていて、女性からの意思表示が見えない限りHしないという設定ですが、従順だった美弥子を「小鳥」と評価して惹かれ心ときめかせ、夫の下を去った美弥子はすでに小鳥でないというところには、私はジョーンズ自身に「マチスト」の感性を見いだしてしまいます。バツイチで今の妻とは別居中で、元教え子と3か月に1度ほど肉体関係を続け、友人のナタリーともかつて関係し、その上で人妻と逢瀬を重ねて関係を持ってしまい、それにもかかわらず作者からは「完璧な紳士」とか好意的に評価され続けるジョーンズに、それはないだろとやっかんでいるということからでしょうけど。


江國香織 講談社 2010年3月24日発行
「週刊現代」2009年6月13号~11月7日号
コメント
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