伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

見えない復讐

2011-03-08 23:59:10 | 小説
 研究室で世話になっていた女性秘書が恋人の大学職員の横領の共犯と疑われて追及され自殺に追い込まれたことを恨みに思う研究室出身の大学院生3人が、大学への復讐の資金を稼ぐために起業しながら大学にダメージを与えるべく小規模な作戦を繰り返しながら大規模な復讐を企画する過程を、同様に大学への恨みを持ち支援するベンチャーキャピタルの思惑と絡めるサスペンス小説。
 細かい部分でややマニアックに展開される心理的な謎解きが実質的な読ませどころですが、全体としての構成には、そもそもそれで大規模な犯罪を含む復讐の動機となるのかに疑問を感じざるを得ません。いくら世話になったといえ、恋人ではない(被害者にはちゃんと恋人がいる)女性が、それも恋人が現実に犯した横領の事実について、追及された結果自殺したという流れで、大学を物理的に抹殺する(爆破して建物を消滅させた上に重金属を撒布して再建も断念させる)ほどの復讐心を持てるものでしょうか。通り魔的な無差別殺人を、個人的な恨みや鬱屈感から敢行する人もいるわけですから、そういう人間の思考への気持ち悪さを描くという意図があるのかも知れませんが、主人公たちが冷静に議論していることからしても、どうかなと思います(本当にそういうことを考えるとしたらますます気持ち悪いですが)。


石持浅海 角川書店 2010年8月30日発行
「野生時代」2007年11月号、2008年5月号、11月号、2009年5月号、11月号、2010年2月号、5月号
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