伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

六月の輝き

2011-11-20 00:32:49 | 小説
 家が隣同士で同じ日に生まれた親友同士だった強がりの外崎美奈子と病弱で優しい瀬戸美耶が、美耶が時間を戻してけがや病気を治す不思議な力を持つことがわかった5年生の夏休み前から疎遠になり、美奈子の父親が倒れて美奈子が美耶に助けを求めるのを美耶の父親が大金を要求して拒否し眠っていた美耶が起きてこず美奈子の父親が死んだときから決定的に決裂し、美耶を憎む美奈子と美奈子の許しを待ち美奈子の指示通りに力を使い続けて衰弱し続ける美耶の関係を中心に、1章ごとに(連載の1回ごとに)語り手を変えて視点を相対化しそのまわりの人々の人生をも描きつつ展開させた青春友情小説。
 本人が優しく病弱で、働かずにパチンコ狂いの父親と働きに出つつ夫もそして娘をも嫌い娘をネグレクトし続ける母親の下で、虐待されながらもけなげに生き続ける美耶が、理不尽な恨みを持ち続ける美奈子に思いを寄せ続ける姿が、悲しくて切ない。時間を戻す力とその力を使うことで加速的に老いていくという荒唐無稽な設定ですが、そういうことをおいてもあまりにピュアな心情が涙を誘います。本人は勝ち気で、父も母も人間味にあふれ幸せな家庭だったのに父には小学5年生で、そして母にも高校生で先立たれる美奈子の不幸と、それを乗り越えようと強く生きる美奈子の姿にも共感します。
 荒唐無稽な設定だけど、美耶の母とかいくら何でもこんなのいるかとも思いますが、それにしても第6章と最終章あたりではのめりこんで涙してしまいました。


乾ルカ 集英社 2011年1月30日
コメント (1)
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