魔術が支配する「別世界」の人間の国「オモワ帝国」の世継ぎの18歳(11巻時点)の少女タラ・ダンカンが、様々な敵対勢力の陰謀や事件に巻き込まれながら冒険するファンタジー。
11巻では、煉獄にあったはずの悪魔の惑星6つが別世界にワープしてきて、悪魔の王アルカンジュは別世界を攻撃するつもりはないと言明するが、アルカンジュの父の前王ヴァッシュはアルカンジュの弟ガブリエルに命じて着々と陰謀を進め、悪魔の侵略を確信したオモワ帝国の女帝リスベスが地球の人間界にこれまで隠し続けてきた魔術師と別世界の存在と悪魔たちの危険を知らせたところ、マジスターが地球を守ってやるから地球の全軍の指揮権を引き渡すよう要求し…という展開をし、悪魔の世界に潜入したタラたちの見聞を通じて悪魔の世界の内部事情や路線対立を中心に描いています。10巻に引き続き主として悪魔の世界を描くことで当初10巻完結と宣言していたのを2巻分引き延ばしたのではないかという印象を持ちます。11巻下の終わりで例によって急展開の「続く」がありますが、黒い彗星の正体が11巻の最後で明かされてしまっていることからして、12巻の冒頭で11巻最後の危機は軽く処理されて12巻は別の展開になるんじゃないかと、私は予想します(2014年9月18日発売予定の原書12巻のタイトルが「最後の希望」ですから、11巻最後の危機が人類の大ピンチとなりタラが最後の希望というパターンもあり得ますが、このストーリーをあっちこっちへ何度も大展開させるのが好きな作者が1巻まるまるかけてそういうまっすぐな展開をするとは私には思えません)。
シリーズ開始から10年がたち読者の年齢層が上がりタラも18才になったことを反映して、11巻ではシリーズ初めてのセックスシーンも登場し、リスベスからタラにセックス禁止令が出されます。マジスターと訣別してドラゴッシュを選びながらマジスターから自由になれないセレンバと、惑うセレンバを一途に思い続けるドラゴッシュの悩ましい大人の関係も、ちょっと切ない。こういう関係がこのシリーズの中心的な読者層の中高生女子にわかるんだろうか。
11巻で発明好きのおじいちゃんムールミュールとムールミュールより頭2つ分背が高い熟年のアマゾネス軍団の元司令官ヘーグル5のカップルが登場します(67~71ページ)。男性の方が大幅に背が低いカップルがファンタジーや恋愛小説に登場すること自体珍しく、高齢者の愛情表現も合わせて、微笑ましく思えました。

原題:TARA DUNCAN , LA GUERRE DES PLANETES
ソフィー・オドゥワン=マミコニアン 訳:山本知子、加藤かおり
メディアファクトリー 2014年8月1日発行 (原書は2013年)
10巻は2013年8月29日の記事で紹介しています
11巻では、煉獄にあったはずの悪魔の惑星6つが別世界にワープしてきて、悪魔の王アルカンジュは別世界を攻撃するつもりはないと言明するが、アルカンジュの父の前王ヴァッシュはアルカンジュの弟ガブリエルに命じて着々と陰謀を進め、悪魔の侵略を確信したオモワ帝国の女帝リスベスが地球の人間界にこれまで隠し続けてきた魔術師と別世界の存在と悪魔たちの危険を知らせたところ、マジスターが地球を守ってやるから地球の全軍の指揮権を引き渡すよう要求し…という展開をし、悪魔の世界に潜入したタラたちの見聞を通じて悪魔の世界の内部事情や路線対立を中心に描いています。10巻に引き続き主として悪魔の世界を描くことで当初10巻完結と宣言していたのを2巻分引き延ばしたのではないかという印象を持ちます。11巻下の終わりで例によって急展開の「続く」がありますが、黒い彗星の正体が11巻の最後で明かされてしまっていることからして、12巻の冒頭で11巻最後の危機は軽く処理されて12巻は別の展開になるんじゃないかと、私は予想します(2014年9月18日発売予定の原書12巻のタイトルが「最後の希望」ですから、11巻最後の危機が人類の大ピンチとなりタラが最後の希望というパターンもあり得ますが、このストーリーをあっちこっちへ何度も大展開させるのが好きな作者が1巻まるまるかけてそういうまっすぐな展開をするとは私には思えません)。
シリーズ開始から10年がたち読者の年齢層が上がりタラも18才になったことを反映して、11巻ではシリーズ初めてのセックスシーンも登場し、リスベスからタラにセックス禁止令が出されます。マジスターと訣別してドラゴッシュを選びながらマジスターから自由になれないセレンバと、惑うセレンバを一途に思い続けるドラゴッシュの悩ましい大人の関係も、ちょっと切ない。こういう関係がこのシリーズの中心的な読者層の中高生女子にわかるんだろうか。
11巻で発明好きのおじいちゃんムールミュールとムールミュールより頭2つ分背が高い熟年のアマゾネス軍団の元司令官ヘーグル5のカップルが登場します(67~71ページ)。男性の方が大幅に背が低いカップルがファンタジーや恋愛小説に登場すること自体珍しく、高齢者の愛情表現も合わせて、微笑ましく思えました。

原題:TARA DUNCAN , LA GUERRE DES PLANETES
ソフィー・オドゥワン=マミコニアン 訳:山本知子、加藤かおり
メディアファクトリー 2014年8月1日発行 (原書は2013年)
10巻は2013年8月29日の記事で紹介しています