元裁判官の著者が、基本的には判決で無罪が確定した冤罪事件について、事件の内容、逮捕・起訴に至る捜査の問題点、有罪とした判決の問題点、冤罪を晴らせた(再審が認められ、また無罪判決を勝ち得た)経緯とポイントなどを分析し、紹介し、捜査と関与した裁判官・弁護士の問題点を論じた本。
それぞれの事件についての事情やポイントがコンパクトにまとめられており、勉強になりますし、読み物としても読みやすくできています。
違法捜査の追及への著者の信念・執念も感じさせますが、最高裁調査官を務め、東京高裁部総括判事(裁判長)として退官したという経歴を見れば超エリートというべき裁判官がこのような意見を持ち(この本では書いていませんが、著者は裁判官として30件無罪判決を出したそうです)本を書いていることには勇気づけられます。
最高裁が松川事件では10日間にわたる弁論を行った(27~28ページ:1959年に有罪判決を破棄差し戻し)、八海事件でも第2次上告審でも第3次上告審でも3日間にわたって弁論が行われ(66ページ:1962年の第2次上告審は無罪判決を破棄差し戻し、1968年の第3次上告審は有罪判決を破棄自判して無罪)第3次上告審の主任裁判官が弁護人と直接面談に応じていた(71~72ページ)、仁保事件でも最高裁は2日間にわたる弁論を行った(119ページ:1970年に死刑判決を破棄差し戻し)など、昔の最高裁の裁判官の意欲と存在感が紹介されており、著者も調査してみて驚いたと書いています(71~73ページ)が、隔世の感があります。東住吉事件の上告審で主任裁判官の滝井繁男裁判官が破棄差し戻しの意見書をまとめていたのに最高裁が滝井裁判官の定年退官を待ってその1か月後に上告棄却決定をしたというエピソード(188~189ページ)が象徴的であり、印象的です。
木谷明 日本評論社 2021年10月15日発行
それぞれの事件についての事情やポイントがコンパクトにまとめられており、勉強になりますし、読み物としても読みやすくできています。
違法捜査の追及への著者の信念・執念も感じさせますが、最高裁調査官を務め、東京高裁部総括判事(裁判長)として退官したという経歴を見れば超エリートというべき裁判官がこのような意見を持ち(この本では書いていませんが、著者は裁判官として30件無罪判決を出したそうです)本を書いていることには勇気づけられます。
最高裁が松川事件では10日間にわたる弁論を行った(27~28ページ:1959年に有罪判決を破棄差し戻し)、八海事件でも第2次上告審でも第3次上告審でも3日間にわたって弁論が行われ(66ページ:1962年の第2次上告審は無罪判決を破棄差し戻し、1968年の第3次上告審は有罪判決を破棄自判して無罪)第3次上告審の主任裁判官が弁護人と直接面談に応じていた(71~72ページ)、仁保事件でも最高裁は2日間にわたる弁論を行った(119ページ:1970年に死刑判決を破棄差し戻し)など、昔の最高裁の裁判官の意欲と存在感が紹介されており、著者も調査してみて驚いたと書いています(71~73ページ)が、隔世の感があります。東住吉事件の上告審で主任裁判官の滝井繁男裁判官が破棄差し戻しの意見書をまとめていたのに最高裁が滝井裁判官の定年退官を待ってその1か月後に上告棄却決定をしたというエピソード(188~189ページ)が象徴的であり、印象的です。
木谷明 日本評論社 2021年10月15日発行