伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。今年も目標達成!

ボクはやっと認知症のことがわかった 自らも認知症になった専門医が、日本人に伝えたい遺言

2022-01-27 21:54:26 | 実用書・ビジネス書
 認知症判定のスクリーニングに広く用いられている「長谷川式簡易知能評価スケール」を考案した認知症専門医が、88歳の時に自らが認知症と自覚して公表し、その経験でわかったことを過去の医師としての自分の経験・認識と照らしながら語る本。
 認知症になっても突然何もかもが変わるわけではなく今日は昨日の続きなわけだし、症状も固定しているわけではなくて朝は調子がよくスッキリしていても夕方になり疲れてくると混乱するとか、それも人によって違うとか、話は聞こえているし悪口を言われたり馬鹿にされたりしたときの嫌な思いや感情は深く残る、意見や意向はゆっくりと聞いて欲しい(こうしましょうねと言われると何も考えられなくなる)、一度にいくつも言われると混乱する、何もできなくなるわけではないので役割を奪わないで欲しいなど、実感のこもった言葉が並んでいます。
 転んで泣いている小さな子に、手を引いて助け起こすのではなく、傍らに自分も腹ばいになって横たわってにっこりと笑いかけ、しばらくして「起きようね」という子どもの話(79ページ)、アルツハイマー型認知症となった義父から「みなさまはどなたさまですか?どなたかわからなくて困っているんです」といわれ、「おじいちゃん、私たちのことをわからなくなったみたいだけど、私たちはおじいちゃんのことをよく知っているから大丈夫。心配いらないよ」と答えた娘の話(151ページ)が、認知症の人との付き合い方として示唆されていて、なるほどと思います。
 2004年の国際アルツハイマー病協会の会議が京都で開催されたとき、認知症患者が「もの忘れが始まって十年になる。病気になってほんとうに悔しい。よい薬ができてこの病気が治ったら、もう一度働きたい。妻にいままでの苦労のお返しをしたい」とスピーチした(141ページ)というエピソードは感動的であり、また考えさせられました。


長谷川和夫、猪熊律子 株式会社KADOKAWA 2019年12月27日発行
 
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