どれくらいの人が不倫をしているのか、誰(どういう人)が不倫をしているのか、誰(どういう人)と不倫をしているのか、不倫関係はどの程度続きどのように終わるのか、不倫を責める人はなぜどのような動機で責めるのかなどについて、既存調査のレビューと、著者らが行った調査の分析に基づいて論じた本。
サブタイトルにあるように、また著者が繰り返し言及しているように、著者らがNTTコムオンラインに登録しているモニター6651人に対して2020年3月に行った結婚生活と不倫に関する調査がこの本の中心的な根拠となっています(50ページ)。それにもかかわらず、この調査の質問紙も回答結果の直接の集計もどこにも掲載されていません。学者さんが独自調査を行いそれを最重要の根拠材料として、「実証分析」と銘打って書くのにそれはどうか、と私は思います。そういう姿勢を見せられると、書かれているいろいろな数字をどの程度信頼してよいのか心許なく感じます。著者が行った別の「実験調査」のサンプルの調整の説明で、「対象者は年齢・性別・婚姻状態・居住地を平成27年に行われた国勢調査の割合を再現するような形で収集した。これはつまり、例えば30~34歳の女性で北海道に居住している人が日本の全体人口の2%を占める場合、この属性の人が全体の2%になるように回収することを指す」としています(58ページ)。私はこれを見て目を疑いました。「30~34歳の女性で北海道に居住している人」が日本全体の2%というのはおよそあり得ません。実際に調べてみると2022年10月1日現在で119千人で日本の総人口124974千人の0.095%です。「例えば」というのだから架空の話でもよいではないかというのかもしれませんが、およそ数字で仕事をしている学者が統計に基づく実証分析をしているときに、このようなまったく外れた数字(20倍以上違う)を書くものでしょうか。
不倫について、そうだろうと思うことも意外なことも取り混ぜていろいろ書かれていて興味深いところではありますが、データについての取扱姿勢に疑問を持ってしまったので、なんだかなぁと思ってしまいました。

五十嵐彰、迫田さやか 中公新書 2023年1月25日発行
サブタイトルにあるように、また著者が繰り返し言及しているように、著者らがNTTコムオンラインに登録しているモニター6651人に対して2020年3月に行った結婚生活と不倫に関する調査がこの本の中心的な根拠となっています(50ページ)。それにもかかわらず、この調査の質問紙も回答結果の直接の集計もどこにも掲載されていません。学者さんが独自調査を行いそれを最重要の根拠材料として、「実証分析」と銘打って書くのにそれはどうか、と私は思います。そういう姿勢を見せられると、書かれているいろいろな数字をどの程度信頼してよいのか心許なく感じます。著者が行った別の「実験調査」のサンプルの調整の説明で、「対象者は年齢・性別・婚姻状態・居住地を平成27年に行われた国勢調査の割合を再現するような形で収集した。これはつまり、例えば30~34歳の女性で北海道に居住している人が日本の全体人口の2%を占める場合、この属性の人が全体の2%になるように回収することを指す」としています(58ページ)。私はこれを見て目を疑いました。「30~34歳の女性で北海道に居住している人」が日本全体の2%というのはおよそあり得ません。実際に調べてみると2022年10月1日現在で119千人で日本の総人口124974千人の0.095%です。「例えば」というのだから架空の話でもよいではないかというのかもしれませんが、およそ数字で仕事をしている学者が統計に基づく実証分析をしているときに、このようなまったく外れた数字(20倍以上違う)を書くものでしょうか。
不倫について、そうだろうと思うことも意外なことも取り混ぜていろいろ書かれていて興味深いところではありますが、データについての取扱姿勢に疑問を持ってしまったので、なんだかなぁと思ってしまいました。

五十嵐彰、迫田さやか 中公新書 2023年1月25日発行
