母と義父から虐待され続けて来た三島貴瑚が、母が嫌っていた祖母と幼い頃に暮らしていた大分県の海辺の町に移り住み、そこで母に虐待され続け同居している祖父からも無視され続けている言葉を口に出せない13歳の少年と知り合い、心を通じ合わせて行くという小説。
表題は、ふつうのクジラの歌声よりも高周波数のためにその声が他のクジラには聞こえず届かない孤独なクジラを自らと、自分と同じ境遇の者になぞらえたもの。
こういうと、同じ体験をした者同士が理解し合えるとか、傷をなめ合うというような話のように聞こえますが、この作品の真骨頂は、虐待から解放された主人公が、しかしその後大事な人の発していたメッセージを聞くことができずに傷つけてしまう、人は意図せずに他人を傷つけてしまう、悪意がなくても人を傷つけてしまうし、容易に他人に聞こえないSOSを聞こうとしていても気づかずに放置してしまう、その経験と後悔の過程の描写にこそあるのだと思います。
とてもほろ苦く切ないお話です。
町田そのこ 中央公論新社 2020年4月25日発行
2021年本屋大賞受賞作
表題は、ふつうのクジラの歌声よりも高周波数のためにその声が他のクジラには聞こえず届かない孤独なクジラを自らと、自分と同じ境遇の者になぞらえたもの。
こういうと、同じ体験をした者同士が理解し合えるとか、傷をなめ合うというような話のように聞こえますが、この作品の真骨頂は、虐待から解放された主人公が、しかしその後大事な人の発していたメッセージを聞くことができずに傷つけてしまう、人は意図せずに他人を傷つけてしまう、悪意がなくても人を傷つけてしまうし、容易に他人に聞こえないSOSを聞こうとしていても気づかずに放置してしまう、その経験と後悔の過程の描写にこそあるのだと思います。
とてもほろ苦く切ないお話です。
町田そのこ 中央公論新社 2020年4月25日発行
2021年本屋大賞受賞作