伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

シャイロックの子供たち

2023-08-23 23:33:58 | 小説
 大田区の住宅街にある東京第一銀行長原支店での銀行員たちの悲喜こもごもを綴った短編連作。
 世間的には羨まれている銀行員の苦しくも哀しい日常と人生が描かれています。
 映画を見て半年後に原作を読みました(映画を見て疑問に思って原作を図書館で予約したところ、予約多数で、半年後にようやく回ってきました)。映画は、第3話、第4話、第7話、第8話、第9話を使い、それに新たなオリジナルエピソードを追加して変形したということのようです。映画を見たときに、終盤に、西木(映画では阿部サダヲ)が沢崎(柄本明)の耐震偽装ビルを売りつけるというところに強い違和感がありました。耐震偽装が発覚しないのならわかりますが、建築士が自白寸前と認識しているのですから、売りつけた後であっても欠陥建築とわかれば、売主は買主から代金返還なり損害賠償なりの請求を受けます。耐震偽装発覚直前に代金を支払わせても、身元が明らかな沢崎は逃げられません。マンション業者の株を高値のうちに売り抜けるという場合(その場合は、インサイダー取引の問題があれば別として、売ってしまえば勝ち)とは全然違います。それを、発覚前に金を払わせてしまえば勝ちみたいな描き方をしているのを見て、何だこれ?と思いました。他のエピソードはきちんと考えられているのに、こんなバカな話を銀行員出身の作家が書くのかと釈然としませんでした。それで原作を読んでみたのですが、やはりこの部分は原作にはなく、法律や不動産取引のことを知らない人が追加したのですね。


池井戸潤 文春文庫 2008年11月10日発行(単行本は2006年1月)

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