非正規公務員の待遇の低さ(官製ワーキングプアの実情)、さまざまな職場での実態、非正規公務員に低い労働条件で恒常的・専門的業務を担わせている制度的・法的根拠、待遇改善をうたった会計年度任用職員制度や女性活躍促進法が待遇改善に繋がっていない現状などについて論じた本。
自治総研の研究員の著者が、雑誌等に書いた論文を取りまとめたもので、そのパターンの本にありがちですが、ぶつ切れ感、重複感があり、特に後半は法制度と数字が中心で、読み通すのがちょっとつらい。ハローワークの非正規職員(1年任期で雇止めされて自分が求職者に回るとか。笑えない)や図書館員、臨時教員などの現状を紹介する最初の方は、とても興味深く読めたのですが。
パート労働者を待遇が低いままで基幹職化を進めた場合、労働者は、第1段階では上司に聞こえるように悪口を言う、言われたことしかしない、離職する(消極的抵抗)、第2段階では不満を抱えたパート労働者が共同して1つの非公式権力を構成して管理者と対立する(積極的抵抗)、第3段階では不満を抱えたパート労働者の生産性が低下、それと連鎖して発生する正社員の負担増を通じた生産性の低下が起こるという主張の紹介がなされていて(44~45ページ)、使用者側の思惑どおりには行かないというところ、なるほどと思いました。
公務員に適用される法律はとてもわかりにくくなっていて、弁護士も事件を担当しないと詳しくは調べないのできちんと理解していないことが多いです。非正規公務員の労災に関して、上下水道、交通事業、学校、動物園、病院、保育所、清掃事務所等の労働基準法別表第一の事業に従事するものは労災保険法が適用され、フルタイムの非正規公務員(常勤の地方公務員に準ずる者)は地方公務員災害補償法が適用され(地方公務員災害補償基金に請求)、それ以外のパートタイム非正規公務員は地方自治体の条例(議会の議員その他非常勤の職員の公務災害補償等に関する条例)が適用される(地方自治体に請求)ことが紹介されています(66~69ページ)。そういう事件を経験していないので、具体的には知りませんでした。勉強になります。
非正規公務員の継続雇用の期待を裏切ったことについて国家賠償請求を認めた中野区非常勤保育士再任拒否事件の東京高裁判決は紹介されています(190~191ページ等:「画期的」と評価していますが、一方で更新回数制限、経験者も新人と同列で受験を要する公募を強要される原因となったとも書いていて、著者がどう評価しているのかわかりにくいですが)が、非正規公務員の雇止めについて唯一雇止めを無効とした国立情報学研究所事件1審判決には一度も言及されていません。高裁で覆され、その後1件も後に続いた判決がなく(雇止めが違法だとしても雇用の継続は認めず損害賠償しか認めない)、今後も現れる見込みがないというのが実情ですが、非正規公務員の雇止めを論じるからには、触れておいて欲しいなと思います。
上林陽治 日本評論社 2021年2月25日発行
自治総研の研究員の著者が、雑誌等に書いた論文を取りまとめたもので、そのパターンの本にありがちですが、ぶつ切れ感、重複感があり、特に後半は法制度と数字が中心で、読み通すのがちょっとつらい。ハローワークの非正規職員(1年任期で雇止めされて自分が求職者に回るとか。笑えない)や図書館員、臨時教員などの現状を紹介する最初の方は、とても興味深く読めたのですが。
パート労働者を待遇が低いままで基幹職化を進めた場合、労働者は、第1段階では上司に聞こえるように悪口を言う、言われたことしかしない、離職する(消極的抵抗)、第2段階では不満を抱えたパート労働者が共同して1つの非公式権力を構成して管理者と対立する(積極的抵抗)、第3段階では不満を抱えたパート労働者の生産性が低下、それと連鎖して発生する正社員の負担増を通じた生産性の低下が起こるという主張の紹介がなされていて(44~45ページ)、使用者側の思惑どおりには行かないというところ、なるほどと思いました。
公務員に適用される法律はとてもわかりにくくなっていて、弁護士も事件を担当しないと詳しくは調べないのできちんと理解していないことが多いです。非正規公務員の労災に関して、上下水道、交通事業、学校、動物園、病院、保育所、清掃事務所等の労働基準法別表第一の事業に従事するものは労災保険法が適用され、フルタイムの非正規公務員(常勤の地方公務員に準ずる者)は地方公務員災害補償法が適用され(地方公務員災害補償基金に請求)、それ以外のパートタイム非正規公務員は地方自治体の条例(議会の議員その他非常勤の職員の公務災害補償等に関する条例)が適用される(地方自治体に請求)ことが紹介されています(66~69ページ)。そういう事件を経験していないので、具体的には知りませんでした。勉強になります。
非正規公務員の継続雇用の期待を裏切ったことについて国家賠償請求を認めた中野区非常勤保育士再任拒否事件の東京高裁判決は紹介されています(190~191ページ等:「画期的」と評価していますが、一方で更新回数制限、経験者も新人と同列で受験を要する公募を強要される原因となったとも書いていて、著者がどう評価しているのかわかりにくいですが)が、非正規公務員の雇止めについて唯一雇止めを無効とした国立情報学研究所事件1審判決には一度も言及されていません。高裁で覆され、その後1件も後に続いた判決がなく(雇止めが違法だとしても雇用の継続は認めず損害賠償しか認めない)、今後も現れる見込みがないというのが実情ですが、非正規公務員の雇止めを論じるからには、触れておいて欲しいなと思います。
上林陽治 日本評論社 2021年2月25日発行
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