伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

記憶の深層 〈ひらめき〉はどこから来るのか

2024-10-04 22:49:57 | 人文・社会科学系
 記憶のメカニズムとよりよく記憶するための方法等を心理学の手法と立場から解説した本。
 タイトルからは、脳科学系の本かと思いましたが、記憶にまつわるさまざまなことを心理学の実験をこまめに紹介しながら説明しているところが特徴となっています。実験を説明されると、その実験からそこまで言っていいのかとか、その程度の標本数でどれくらい普遍的に評価できるのかとか、次々と疑問は湧きますが、根拠を説明しようとする姿勢には好感が持てます。
 記憶の定着に関しては、イメージとの結びつきや繰り返し、特に覚え込む(インプット)ことよりもアウトプットを繰り返すのが有効ということですが、それはよく聞く話です。
 サブタイトルのひらめきについては、「はじめに」でも個人の記憶の蓄積=個性が創造性の基礎となると述べていることもあって、そちらの話を期待しながら読みましたが、最後の10ページ程度で言及しているだけで、それも、ひらめきは問題から一時的に離れて休んでいる間に無意識的な活動が行われ続けることによって得られる、ただし、このような無意識的な活動の前には徹底的に集中して考え抜くことが重要(167ページ)というようなよく聞く話にとどまっています。
 著者は、それに一人ひとりの記憶や知識や人生経験の違いに根ざした無意識の働きである連想の独自性はAIには真似のできないもので人間は誰もがみな創造性に溢れた存在という主張(175~176ページ等)を追加していて、それはいいとは思いますが、それまで積み重ねてきた話との関連性が、私には今ひとつ感じられず、ちょっと浮いた感じがしました。


高橋雅延 岩波新書 2024年7月19日発行


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