伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

浄土思想 釈尊から法然、現代へ

2023-10-24 20:04:41 | 人文・社会科学系
 浄土思想・浄土教について、物語の生成という観点で解説するという本。
 「教義・教学もその前提となっている物語の力を感じ、体得することができなければ、たんなる抽象的な概念の体系となってしまう。日本で浄土思想が多くの信者を獲得していったことを理解する鍵は、浄土教の物語が動的に関連していったさまを知ることにある」(はじめに:ⅱページ)という問題意識が中心となっています。その中で親鸞については「他の浄土教の思想家に比べ、親鸞は感覚的で実体的な浄土は否定的に取り扱っている。親鸞の教説の大きな特徴は、仏や浄土を感覚的・現実的なイメージではなく、抽象的・原理的に表現することにある」(155ページ)としつつ、「親鸞伝絵」等の親鸞伝による新たな物語が新たな信者獲得につながっていった(167ページ)とされています。そうすると、浄土思想と言うよりも教団の戦略と言うべきかもしれませんが。
 この本の問題意識からはズレるかもしれませんが、法然の弟子や信徒には念仏を信じることで往生できるとして道徳的な悪を犯しても構わないと吹聴するものも現れ、それも弾圧(元久の法難)の原因となり、法然が七箇条制誡の中で「念仏の教えには戒律が不要だといって飲酒・肉食を勧め、悪を造ることを怖れるなと説くのを止めること」を挙げた(78~86ページ)というエピソードがあるのを見ると、悪人正機説で有名な親鸞はそのような問題には悩まされなかったのか、どう対応したのかが気になりましたが、そこはまったく触れられていない(親鸞の項で悪人正機説への言及自体がまったくない)のが残念でした。


岩田文昭 中公新書 2023年8月25日発行

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 東京建築さんぽマップ 最新... | トップ | やる気になる糖尿病患者さん... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

人文・社会科学系」カテゴリの最新記事