京都市内の不動産屋のパート社員杏こと都築杏子35歳と私立中学教師ミッキーこと笹本幹広、東京の町立図書館の館長襟野みずき32歳と関西に本社のあるメーカーの東京の部品製造工場の責任者として労働者のリストラに取り組む斉田明典の2組のバツイチ女と既婚男の不倫カップルの恋愛小説短編連作。
男たちは、子どもが中学生になったらすべてを話して妻と別れると言ってダブル不倫だった杏には夫と別れさせたミッキー、関西にいる妻は癌で入院中と偽って業務の都合で東京と大阪の二重生活を続けつつみずきを東京妻としてキープする明典と、どちらもありがちな実際には妻と別れることなど考えてもいないが調子のいいことを言って不倫関係を続けたい小ずるい連中と読めます(作者はそう設定したのではないかもしれませんが)。それに対して、杏はかつて婚約者の父親に横恋慕して密通を続けたり、後には夫の連れ子に手を出してしまうという節操のない肉食系、みずきは仕事も堅実で性格もよく相手を一途に愛するよくできた人。その組み合わせで、とろけるような蜜月、あるいは爛れた性生活に始まり、少しずつ影を落として別れに至る流れを、2組で交互に書き連ねています。いずれも女性側の視点から書かれていますが、男性読者には、男性読者に対しては、妻をキープして不倫相手と夢のような関係がいつまでも続くわけないでしょと言われているような気がします。
2組の間は、現実世界では交わりませんが、みずきの側からは杏たちの話がみずきの大好きな作家の書いた恋愛小説の世界として、杏の側からは、なぜか京都の杏の地元の杏が「無人島」と呼ぶ小さな図書館がまるでみずきが館長を務める東京の町立図書館のように暗示されています。
小手鞠るい 幻冬舎 2012年10月10日発行
男たちは、子どもが中学生になったらすべてを話して妻と別れると言ってダブル不倫だった杏には夫と別れさせたミッキー、関西にいる妻は癌で入院中と偽って業務の都合で東京と大阪の二重生活を続けつつみずきを東京妻としてキープする明典と、どちらもありがちな実際には妻と別れることなど考えてもいないが調子のいいことを言って不倫関係を続けたい小ずるい連中と読めます(作者はそう設定したのではないかもしれませんが)。それに対して、杏はかつて婚約者の父親に横恋慕して密通を続けたり、後には夫の連れ子に手を出してしまうという節操のない肉食系、みずきは仕事も堅実で性格もよく相手を一途に愛するよくできた人。その組み合わせで、とろけるような蜜月、あるいは爛れた性生活に始まり、少しずつ影を落として別れに至る流れを、2組で交互に書き連ねています。いずれも女性側の視点から書かれていますが、男性読者には、男性読者に対しては、妻をキープして不倫相手と夢のような関係がいつまでも続くわけないでしょと言われているような気がします。
2組の間は、現実世界では交わりませんが、みずきの側からは杏たちの話がみずきの大好きな作家の書いた恋愛小説の世界として、杏の側からは、なぜか京都の杏の地元の杏が「無人島」と呼ぶ小さな図書館がまるでみずきが館長を務める東京の町立図書館のように暗示されています。
小手鞠るい 幻冬舎 2012年10月10日発行