★木の揺れが水に移れり半夏生 大木あまり
私の解釈では、季語は半夏生。二十四節気のうちの夏至の時期、七十二候の第三候。夏至から11日目、ないしそれから5日間をいう。また半夏生はドクダミ科植物のことでこの時期に白い花をつけ、葉も白く変色する。なお、サトイモ科の半夏(漢名:烏柄杓(からすびしゃく))という説明をするものもある。開花時期はやはりこの時期。どちらが正しいかは私には判断できない。今回は前者のドクダミ科の植物と解釈してみた。
私は句意は、次のようだと思っている。
「梅雨のころの蒸し暑い時期、緑旺盛な水辺の樹々の葉が水面に映って揺れている。その揺れは梅雨時の蒸し暑さを受けて物憂げである。物憂げなゆったりした揺れが魚のゆったりした動きに移ったかのようである。水の中の魚は涼しげであるが、動きが物憂げに見えてしまう。樹々の下には湿地を好む半夏生の白く変色した葉も物憂げにゆったり揺れている。」
このようにかなり面倒な意味合いがある。どうも多くの解釈は、「移る」を「波に映る」だけに解釈しているような解説もある。水面に揺れが映るだけでなく、揺れが魚の動きに「移る」という解釈が抜けているものが多いのではないか。
もう一つの解釈のずれは、7月初めという梅雨の時期であることが抜けていることだと思う。爽やかな夏のきらきらした太陽のもとの花ではない。ハンゲショウの花は白いが小さく目立ちにくい。葉が花弁のように白く変色するのである。揺れも花弁の揺れではなく、葉のゆったりした揺れと解釈したい。
一方では「涼し気な白い花や葉」「明るい太陽のもとの樹々の葉の揺れ」という情景も捨てがたいことは確かだ。そうはいっても梅雨の間の滅多にない晴間、という限定は無理がありそう。
はて、結論・正解はいかなるものであろうか。