★ひらきたる薄紅梅の空に触れ 深見けん二
★紅梅やゆつくりとものいふはよき 山本洋子
すでに散ってしまった梅もある。今誇らしげに花を咲かせている梅もある。紅梅には晴れた空がよく似合う。空の色が濃くかがやいて紅梅の色と響き合う。
私は白梅よりも紅梅が好みである。それも晴れた日の、空が大きくひらけたところに咲く紅梅が好きである。空が小さい路地の紅梅には心底同情してしまう。あんなところに紅梅を植えるなんてもったいない、といつも思う。
第1句、枝の先に咲いたほのか紅色をした梅、確かに青い空にとどくように色を発している。枝の長さは当然にも空には届かないが、その色は何処までも上昇してあの青い空に届いている。そのように思う感性を大切にしたい。
第2句、多くの女性は老若を問わず、テレビの影響だろうと思うが、頭のてっぺんから発するように甲高い声で、しかも早口にしゃべる。それも喉に過剰な力を入れで。自然な発生からは程遠い甲高い声を出す。それが「かわいい声」なのだそうだ。私にはとてもではないが、その価値観は理解できない。
紅梅が満を持して綻び、開花するさまは、重みがあり、そして人々に春の間近なことを知らせてくれる。堰を切ったようにとどめようもなくしゃべり散らすおしゃべりは申し訳ないが、あまりにけたたましくて、軽々しい。一つ一つの発語にこめられた思いは、ゆっくりとしたほうが伝わる。梅のほのかな紅にもそんな重みを感じる。