冬の夜空に関する句を並べてみた。私にはいづれもこれこそ冬、というイメージを醸し出していると思える句である。人によって冬のイメージはそれぞれ違うのが当たり前ではえるが、私の冬のイメージと重なっていると思えた。
★戸口まで道が来ており冬の月 鳴戸奈菜
★冬三日月高野の杉に見失ふ 桑島啓司
★再びは生まれ来ぬ世か冬銀河 細見綾子
★凍星を組みたる神の遊びかな 須佐薫子
第1句、冬の月に照らされた道は、アスファルトでも砂利道でも白く浮き上がる。戸を開けると家の中まで道は入ってこようとする。私の身体も貫いていく。貫かれる私には冷たく感じるときもあるが、そのやわらかい光に身を貫かれることが自然との一体感の象徴に感じられるときとがある。この場合はどちらであろうか。
第2句、細い繊細な月ながら、鋭利な刃物のように鋭い刃物のように見える三日月、鋭いエネルギーを秘めて身を潜め、作者に狙いを定めているのかもしれない。
第3句、人は死ねば死にきり、という達観にはなかなかなれない。銀河の向こうにも再生する場所はないと思う。私はそれが解脱だと思う。
第4句、神の遊びで生まれた人生、神のいいなり、そんな風に神の都合で生き死にを決められるわけにはいかない。私にも凍星にも都合がある。ひょっとしたら凍星にも生命があるやもしれぬ。神の都合で勝手に組み替えたり、並べ替えたりしないでもらいたいものである。それぞれがそれぞれの意志とありようによって、位置を占めているはずである。とはいえ、何らかの意志を感じる瞬間もあることは否定できない。