この展覧会の最期に展示されていた作品がここに掲げた「カード・テーブルと鉢植えのある室内、ブレスゲーゼ25番地」(1910-11、マルムー美術館)。
解説では「ハマスホイ後期の室内画の中で、最も完成度の高い作品の一つである」と記されている。
中央の扉の向こうは「「ピアノを弾く妻イーダのいる室内」(1910、国立西洋美術館)で妻イーダがピアノを弾いていた部屋である。ここではその室内に奥行き感はなく、左側の壁の続きのようにすら見える。
そのかわり、テーブルと移動してきた左側の蓋のしてあるピアノのある部屋の空間の奥行きが強調されている。何よりもテーブルの上の鉢植えと葉をつけた植物が据えてあるのが珍しい。
ハマスホイは陶器や家具は描くが、生きた植物を配置しているのは貴重である。左の窓からの光は強めで、窓の影が鮮明である。上部に掛けてある絵画はハマスホイの常であるが、具体的にどのような作品かを示すことのないように丁寧にボカされている。
私は鉢植えの載ったテーブルの上面が鏡のように部屋の仕切りの木を反射していることに気がついた。この鏡のような表情が好ましい。さらに作品全体が、赤味を極力排除して、落ち着いた静謐な雰囲気を描いていると同時に、暖かみを感じる。寒色が多く用いられているにもかかわらず、この暖かみは何処から来るのであろうか。多分、光の強さとコントラストが強めに設定されているためだと思う。
丁寧に人の雰囲気やら生物の痕跡を消し去って中で、この鉢植えの植物がじつに際立ってくる。またビアノの上に置いてある陶器の器とランプのような置物、特に後者が鉢植えの植物と呼応するようである。
日光の斜線とともに、鉢植え-ランプ-陶器とでできる鋭角三角形の斜線が、垂直と水平線の強い構成に対してリズムを与えていると思う。
陶器の器-ランプ-鉢植えは同時に無機のものから焔という温み、そして植物という有機質へという変化も表しているように思える。
いろいろな見方が出来て、飽きない作品ではないだろうか。