本日は第3章「神や異界と接触する 但馬・丹後・丹波」を読み終えた。
「(浦島子伝承)は、古代中国から伝来した神仙思想に裏付けられたモダンで哲学的な小説だったのだが、ほんとうにあった出来事として「伝」に描かれる時、丹後が舞台になったのである。それは、北に海の広がる古代の丹後あるいは多遅摩(但馬)がそうした異界幻想を可能にする土地として存在したからだということを、ここでは強調しておきたい。浦島子の物語は、万葉集でも、高橋虫麻呂‥によって、叙事的な長歌に詠まれている。虫麻呂が舞台に選んだのは、難波の海岸だった。難波は律令国家「日本国」の表玄関であったわけだが、その難波に並ぶほどの湊をもち、異界に向き合う海が、丹後の筒川あるい多遅摩にはあったのだ。‥この地には、浦島子の物語とならぶモダンな物語、天女伝承か゜早くから伝えられていたことを、やはり丹後国風土記(逸文)が教えてくれる。‥琵琶湖の北の余呉湖に伝えられた天女や三保の松原の天女などに先立つのではないかと思われる。もっとも古い天女伝承のひとつだが、それが丹後半島に伝えられていたというのも、これまでの論述から納得出来るのではなかろうか。」(第3章の「異界往還 タヂマモリと浦島子」)