本日、第8章「風俗画としての浮世絵」を読み、全体を読み終えた。
「浮世絵の語は1680年代初めから、江戸、上方の両方で出版される草紙、絵本の類に見られます。主に当世の美人風俗を描く図を指した・・。春画やそれに近いエロチックな描写が、そのころの浮世絵の本領であったことも察せられます。菱川師宣は、自ら浮世絵師と称した最初の画工と思われ・・。」(第8章)
「枕絵こそは、やまと絵の伝統の継承者を自負する浮世絵師の技量の見せどころだったのです。枕絵の高い芸術性の秘密はそこにあります。・・北斎の有名な枕絵の肉筆画冊「浪千鳥」を見る機会があり、強い感銘を受けました。・・どの構図にも緊張感がみなぎり、画家の気分の芸術的高揚がじかに伝わってきます。・・一種の歓喜天曼荼羅と形容してもよい・・。」(第8章)
「(久隅守景の「納涼図屏風」に)描かれた親子の気品ある顔つきは、農民というよりむしろ武士のそれで、土地から離され、城下の都市に住むことになった武士たちの田園生活への郷愁が感じられ、身分の拘束を離れた自由な生活へのあこがれもそこに込められているようです。」(第8章)
この「納涼図屏風」に描かれた人物への言及として、私は全く同意である。私はもっと進めて、男を守景、女性を父と和解した娘とその子、という仮定があることをどこかで読んだことがある。とても惹かれる仮説だと感じている。
「慶長や寛永の(風俗画の)女性像の美しい衣装の中には、生身の体があり、彼女らの笑い声、息づかい、胸の鼓動までが伝わってくる・・。それに比べると浮世絵美人は冷たく抽象的でさえあります。美化のゆきすぎが、対象の現実感を弱める結果をうんでいます。」(第8章)
「「北斎漫画」の中で力強くユーモラスに展開されている庶民生活の種々相(によって)日本の風俗画は、初めて、庶民の目による庶民生活の描写に至り着いたということもできましょう。」(第8章)