「知っておきたい地球科学 バッグバンから大地変動まで」(鎌田浩毅、岩波新書)を読み終わった。
第1節~第53節(第1章から第3章)までと第4章の後半の第66節から第72節までは、地球物理学、地震学、火山学の啓蒙書としていい復習になった。
私がこの書物に求めたのはこの復習のため。
しかし第4章の前半第54節~第65節までは、政府の中央防災会議と富士山火山防災対策協議会の内容の紹介・要約だと思う。
むろん、啓蒙書としてこれらの紹介・要約は必要だということは理解できる。地震や火山噴火の予知ができるか否かとは別に、行政として災害時の想定やら対策、避難誘導対策、社会への影響力を冷静に見極めることは大事である。
また被害を少しでも小さくする心構えを周知することを否定するつもりは毛頭ない。
ただ別の役割の書物を合体させたものという感想を持ってしまった。というよりも勝手に私がこの著者とこの書物に求めたものが違っていたようだ。
公表された中央防災会議の地震メカニズムの検証、あるいは評価、せめて解説を期待していた。本当に中央防災会議が立脚した地震のメカニズムや予知の根拠が科学的に裏打ちされたものなのか、政治的な思惑(為政者自らの不都合を隠ぺいするために外敵を誇大に作り上げたり、天災の危険を煽り目をそらすのは古来からの政治の常道)に基づくものなのか、専門家の視点からの発言が欲しい。おおいに注目される著者だけにそこに視点を定めて論述してほしかったと思った。
政府や行政の発表したものを垂れ流すだけならば、行政の作ったパンフレットで十分である。もっともそれもまた怪しい誤解を生むような編集であることも多い昨今である。チェック機能がおおいに落ちている行政の「丸投げ」体質が横行してしまっており、おおいに危惧をしている。そのチェックをしてもらえるならば有難いものである。
著者が政府や行政の広告塔にならずに、厳しいチェックをするかたになってもらいたいと期待している者のごまめの歯ぎしり的感想である。