メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

考える絵本4『美』

2013-01-21 17:37:05 | 
考える絵本4『美』(大月書店)
日比野克彦/作

「考える絵本」シリーズ、今回のテーマは美。
日比野さんが実際参加した2003年のアートトリエンナーレ「大地の芸術祭」@新潟・妻有での出来事を基に書いたという。


▼あらすじ
「かつひこ」はある日、朝顔にかこまれた美術館に入ってゆく。
そこに描かれている人から1粒の朝顔の種をもらう。
種を植え、まだ芽が出ないうちから、屋根までのびるロープを張った。
それを見て、知らない人も一緒に芽吹く様子を想像する。

芽が出て、つるが巻きつき、花が咲いて、種がたくさんとれた。
その種たちは、自分たちを愛情こめて育ててくれた記憶がちゃんと入っていて、旅の準備ができていた。
“種は船”を造って、航海に出る種たち。

 

これぞ絵本って感じ。
美を語りつつ、わたしには命の連鎖の話に思えた。

母親に起こされた「かつひこ」と、彼が埋めた1粒の「種」が同じに思えたからだ。
最初1粒だけだった種から、大勢の分身が「これまでの記憶」を携えて
大きな外界へと旅立ってゆく様子は、夢や希望に満ちている

日比野さんは、絵も描きながら、また、素晴らしい詩人でもある。
歌も出てくるから、シンガーソングライターでもあるかもしれない
すべての創造は、別個じゃなく、専門家がやる“特別なこと”でもなく、
みんなにもとから備わっている表現する力、想像する力なんだ。

「“美”とは創りだすものの形や色ではなく、受け取る人の中にこそあるのではないでしょうか?
 ものを見て美しいと思うのは、そのものに美が存在するのではなく、
 それを感じることができる人の中にあるのです」

っていう考え方もとても新鮮だった!


横に開く本に縦描きしたイラストもビックリしたし/驚


【内容抜粋メモ】

「わたしたちは種の人です。
 この船でいろいろなところへ行くんです」

「船をつくろう 種の形をした船を
 船をつくれば、見えないものが見えてくる
 まだ見ぬこれから出会う人、
 まだ見ぬこれから出会う土地、
 見えないものが見えてくる」


【あとがきメモ】
記憶を運ぶ種はまるで船のようだ。
人と人、土地と土地をつなぐ「種」の力に、想像する力を改めて教わったのです。

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考える絵本5『悪』

2013-01-21 17:37:04 | 
考える絵本5『悪』(大月書店)
石坂啓/作

「100%いい人も、100%悪い人もたぶんいません。
 いいことと悪いことの差もはっきりわかることばかりではないような気がします」

 

▼あらすじ
猫のタマオは、ある日、悪い顔でちょっとカッコいいお面を拾った。
それをつけると、普段は叱られるから我慢しているようなイタズラやイジワルもできちゃうけど、
それによって友だちは怖がって逃げてしまい、いつしか悪のお面はとれなくなってしまう。

焦って家に戻ると、いつもの自分がいた。自分が2人
混乱して泣いていたら、お母さんが「どちらもウチの子なら一緒にいればいいじゃない」と言ってくれる。
それから2人は一緒に暮らしている。
「だってどっちもボクなんだもん」



さすがマンガ家さんだけあって絵が可愛くて親しみやすく、ストーリーも簡潔で分かりやすい。
1人1人の中に善と悪があることも、これなら子どもにも理解できるだろう。

あとがきに石坂さんは、絶対悪があるとするなら、それは「戦争」にほかならないと言っている。納得。


石坂さんは、実際おウチで可愛いにゃんこを飼っているのね


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考える絵本6『子ども・大人』

2013-01-21 17:37:03 | 
考える絵本6『子ども・大人』(大月書店)
野上暁、ひこ・田中/文 ヨシタケシンスケ/絵

「考える絵本」シリーズの監修者である野上暁さんと、ひこ・田中さんが文を書いている。
子どもと大人の言い分を描くことによって、ひいては「生きる」ことそのものの哲学や、
最近考えていた「インナーチャイルド」のことまでリンクした心理学にも通じるものがあった。

ヨシタケさんのイラストがいちいち面白くて味わい深い。
1カットでいろんなことを語りかけ、問題提起してくる。
これを家族や学校で読めば、大人は子どもに対して、子どもは大人に対して、
もっと“寛大”になれるんじゃないかな?w


【内容抜粋メモ】

「“考える”って、一人ですることみたいだけど、他の人と意見を交換しあいながら深めていくものなんだよね」

子ども「大人はズルい」
「子どもなんだから早く寝ろ」って言ったり、「もう子どもじゃないんだから、自分で早く起きろ」って言ったり

でも、「子どもは大人になれる」けど、「大人は子どもにもどれない」


子どもにいろいろ押しつける人もいる。
自分も子ども時代にそんなふうにされたから、そうするのが大人の役目だと思いこんでいるのかな。


大人だって「できたら一日中遊んでいたい!」って思う。
でも、子どもにはいつも「勉強しろ」って言う。
それは、たくさんの「なぜ」の答えを知るため。自分の気持ちをちゃんと言葉で言うため。

でも、やっぱり腹がたつこともある。
したくないことをさせられそうな時、イヤなのはわかっているのに、うまく伝える言葉を知らなくて。
どうしていいか、わからない

答えをテレビやネットから探そうとしたり、皆は知ってて、自分だけ知らないのか?て布団にもぐっている子どもはわたしと同じだ。


どうしようもない気持ちになったら、そんな自分から逃げてもいいんだよ。
きみがこれから出会う悩みや怒りや痛み、それをぜんぶ解決しなければ次へ進めないわけじゃない。
きみがダメだと思ったら、きみがダメだと感じたら、
考えこまずに、ひとまず逃げてしまえばいい。
そう決めるのも、「考える」なんだ。

 
山登りは、休み休みいろんなことしながら登ったほうが楽しい。
急いで頂上に着いたって寂しいし、つまんないし、体によくない。



  

ゆっくり、ゆっくり、考えつづける、大人になればいい。



【あとがきメモ】
子どもって、一人では生きてはいけないから、保護者や社会の影響をものすごく受けてしまう。
でも、何か不満があっても、なんとか楽しいことも探すし、工夫もする。
そうした強さが子どもには元々あるのね。
だから、その強さがしおれないように!って、いつも思っている。
「考える」力っていうのは、そのためのミネラルみたいなものかな。

 
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考える絵本7『しあわせ』

2013-01-21 17:37:02 | 
考える絵本7『しあわせ』(大月書店)
辻信一/文 森雅之/絵

辻さんは、NGO「ナマケモノ倶楽部」を設立。ステキな名前の団体だな
自らの南米でのペペさんや、コーヒー店のマスターとの思い出を1冊の本にしたとのこと。
食料や富の分配の話は、先日読んだ『アミ小さな宇宙人』ともリンクした。
というより、すでにそういった暮らしを実践している人々がいることに驚いた

そして、宮崎駿さんが、田畑はよく原風景とか言われるけれども、
他の植物を根こそぎとって切り拓いた人工のものですからってゆってた意味も少し分かった気がした。

 

▼あらすじ
少女マヤは、お父さんが通う珈琲屋さんに初めて入ってみた。
マスターのさちおさんは、特別席のナマケモノ椅子に座るよううながす。
マヤはいつしか眠ってしまい、南米の国に行き、ジャカランダの物語りを聞く。

木はフェリシダ家のペペ老人とその家族を紹介する。

「10の家族がそれぞれ畑をもち、家畜を飼っている。
 自分たちの食べるものはほとんど作っているし、
 足りないものがあれば、互いに借りたり、分けあったりする。
 だからあまりお金はいらない。そう、みんなでひとつの家族みたいなもんさ」

『コーヒーは金のなる木』と言われ、競い合うように森を燃やし、木を切ってコーヒー園をつくり、
農場主たちの家族は豊かになっていった
でも、豊かさは、かえって幸せの邪魔をしたりするんだよ。



ペペは若い頃、都会の建設会社で働いていたが、病気になった時、
ナマケモノを見て子どもの頃の夢を思い出し、農場に帰ってきた。



だれもがもっている弱さを認めあい、助けあい、足りないところを補いあう。
そうすれば、みんなもっと幸せになれるはずだ。ペペはそう思ったんだ。

農場で農薬を使いだし、農薬が溶けた水を飲んだ牛が死んだり、
農薬をまく人が頭痛を訴えたりした
ペペはブラジルで初めてのオーガニックのコーヒー園を作る。

人間が幸せであるためには、ほかの生きものの幸せが大事らしいって気づく。

世界では、人間たちが裕福になるために、地形を変え、森を切り拓き、水や空気を汚し、
それはまるで、人間が自然を相手に戦争をしているみたいだった。
世界中で公害や原発事故や戦争が起こり、
このままでは人間の未来はない、と多くの人が思いはじめた。

フェアトレードとは
フェアは公平、トレードは交換。
大好きなリンゴを分ければ、きみの食べるぶんは減る。でも、友だちと一緒に食べたら楽しい。
友だちは、喜んで、お返しに別のものを分けてくれる。
フェアトレードは、そんなふうに相手の身になって、分かちあい、
両方が前よりも幸せになる交換のことをいうんだよ。


【あとがきメモ】

ヒマラヤの山奥には
「どれだけ豊かかより、幸せかどうかが大切だ」という考え方を
国の憲法にまで書き込んでいるブータンという国もある。

「しあわせ」という言葉の中には「居合わせ」という言葉がある。
いろんなモノやコト、ヒト、イキモノと「いあわせ」てきたこの奇跡に感謝するしかない。

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