■『恋文』(1953 デジタル)@渋谷シネマヴェーラ(2018.6.30)
“戦争と女たち 2018/06/16 ~ 2018/07/06
戦争に翻弄されながらも戦中・戦後を生き抜いた女たちを描いた作品を特集。『従軍慰安婦』の再映も!”
監督:田中絹代
出演:
森雅之 真弓礼吉
久我美子 久保田道子
道三重三 洋 礼吉の弟
宇野重吉 山路直人 旧友
香川京子 保子 古本屋店員
田中絹代 下宿のおばさん
関千恵子 事務員風の女
中北千枝子 レストランの女
花井蘭子 とんかつ屋の主人
木下恵介 写真屋
加島春美 礼吉の少年時代
夏川静江 母
ほか
“田中絹代の第一回監督作品。丹羽文雄の同名小説を木下恵介が脚色した。
成瀬巳喜男が脚本に手を入れ、笠智衆や入江たか子などそうそうたるメンバーがカメオ出演を果たしている。
年老いた洋妾役で田中絹代本人も出演。
戦争から帰還したエリート軍人の真弓礼吉は、弟の洋のアパートに身を寄せながら、山路の仕事を手伝っていた。
山路は兵学校時代の友人で、洋妾(外人相手の娼婦)から米兵へのラブレターの代筆を生業としていた。
ある日、山路の店へ道子がやってくる。彼女は戦前、礼吉と付き合っていた恋人で、他の男と結婚したはずだった。
どうして自分を捨てて他の男と結婚したのか、どうして米兵相手の洋妾になったのか。
変わり果てた道子に激怒し、礼吉は酒におぼれるようになってしまう。”
大好きな森雅之さん×久我美子さんの主演作で、前回観逃したのを悔やんでいたら、再上映されて、早速観て来た/歓喜
田中絹代さんが監督なのかあ/驚
女性目線だからこそのきめ細かい悲哀が感じられる
ラストの男性のセリフが胸に刺さった
洋妾に絡まれるシーンで、後ろの男性は笑っていたけれど、
この辺がどうにも噛み合わない男女の意識の違いなんだな
この大女優がこの役で!というところが可笑しかったのかもしれないけど
笠智衆さんがチラっとカメオ出演していたり、特別出演者の豪華さがさすが
関連して、有馬稲子さんら、トークショーの顔ぶれもスゴイ
▼あらすじ(ネタバレ注意
冒頭、スタッフの名前が手書きで、花が添えられているのも女性監督らしい
幼馴染の真弓礼吉と久保田道子は、小さい頃から好き同士
マユミが戦争に行き、手柄をたてる一方、ミチコは母を亡くして、後妻にいじめられ
父母から縁談を迫られる
父:兵隊を待っても帰らないよ と言われて泣き崩れるミチコ
ミチコの結婚を知り、マユミは絶望して、戦地で死にそうな目にも遭い
帰国後も、人妻と知りつつ、東京に引っ越したと耳にしたミチコを5年間も探し続けている
弟・ヒロシの部屋に居候し、英語やフランス語の翻訳の仕事を細々としているマユミ
ヒロシ:
兄さんはなぜ結婚しないの? 兄さんくらいの腕があれば、立派にやっていけるはずなんだ
なにかワケがあるんだね 結婚すれば、生活なんてどうにでもなるよ
マユミは財布の中にミチコの若い頃の写真をしのばせ、手紙もまだ持っている
手紙には、結婚してもなお、幼い頃からお慕いしていた気持ちを伝えておきたかったと書かれている
弟は、古本を売ってマージンをもらって生活費にしている
「たまには外に出たらどうだい」と言われたマユミは、旧友・山路直人に会い「仕事をしないか?」と誘われる
ごちゃごちゃした商店街の一角で手紙の代筆をしているヤマジ
お客として来るのは洋妾(外人相手の娼婦)たち
戦時中、アメリカ兵と暮らして、子どももできたのに
戦後、彼らは妻子のもとに帰国し、ろくに養育費・生活費も送ってこないため
「涙に濡れて、お待ちしております」などと英語で名文句を書いてもらっている
最初は戸惑い、彼女たちを軽蔑するマユミだが、弟の部屋に居候している引け目から引き受けるうちに
だんだん仕事にも慣れてくる
ヤマジは、2人の子どもがいて、妻も病身のために始めた仕事だが、続けるうちに、
彼女たちの困窮、生きなければどうにもならないという力強さが分かったと話す
ヒロシは兄の仕事ぶりを見に行ったついでに入った古本屋で店員の保子と出会う
次々とアメリカの雑誌等が持ち込まれ、ダブって仕方ないとこぼす保子 名案を思いつくヒロシ
商店街の使っていない板を使い、屋台をたてて、交番で許可をもらい
保子から仕入れた雑誌等を売る仕事を仲間と始める
700円で仕入れた本を1200円で売り、「アイデアが勝負だよ」
代筆の店に来た女性の声がミチコに似ているため、後を追い、2人はとうとう再会する
(久我さんの声はステキな特徴があるものね それにしても登場前までが長かった
ようやく会えても、結婚相手から逃れ、貧困の末にアメリカ兵に身を任せて子どもをもうけ、
その子どもを亡くし、生活費を送って欲しいと代筆を頼みにきたミチコをどうしても許せないマユミは、
「なぜまっとうに生きなかったんだ!」と酷く罵倒し、泣いて詫びるミチコ
珍しく泥酔して帰った兄の財布からミチコの写真を見つけたヒロシは
ヤマジに相談して、2人の仲をとりもとうと奔走する
ヤマジはミチコの実家を調べ、ヒロシが会いに行き、事情を話す
ヒロシ:兄さんも許したいんだ 僕もミチコさんと結婚して欲しい
ミチコ:せめてまともな仕事を見つけてからにします
その後、一流ホテル?のクロークの仕事を見つけるミチコ
ヒロシは早速、2人を会わせようとレストランにマユミを呼ぶが
事情を話すと「僕は会わない!」と出て行ってしまう
ヤマジに「彼女に罪はない これは君の再生でもあるんだ」と諭され
再びレストランに行くがもう出たと言われる
実家にも寄るが、まだ帰らないため玄関先で待つことにする
だいぶ待ったが兄が来ないと分かり、家までミチコを送るヒロシ
そこに「ミッチーじゃない? お久しぶり!」と洋妾3人に声をかけられ
「人違いです」と言うと怒って「今度は日本の男を相手にしてるのかい?」と野次られる
やっとのことで振り切るが、疑惑を隠せないヒロシ
ヒロシ:君は本当に旦那さんと、アメリカ兵の2人だけだったのかい?
ミチコ:
事務をしていたら知人になったの
あの人たちは、仲良くなるとみんな仲間だと思うのよ
でも、誰に言っても信じてもらえないんだわ
泣きながら、フラフラと道路に出て、クルマに轢かれるミチコ
実家に警官が来て
「ミチコさんが交通事故に遭ったので、誰か病院に来て下さい」と言われ
慌ててタクシーを走らせ、激しく後悔するマユミ
ヤマジ:
オレたちは戦争で必死に殺し合い、敗戦後は必死に生きた
一体誰が誰に石つぶてが投げられるというんだ 許してやれよ
真っ白な包帯をキレイに頭に巻いた久我さんの真正面からの顔も美しい
ふと、目を開けて「終」の文字が出る 希望の見えるエンディングにホッとした
敗戦当時であっても、逞しく生きる商店街の人々の暮らしぶりも見事に描かれている
田中さんは監督の才能もあったんだなあ
ちなみに笠智衆さんは、クロークにコートかなにかを預けるだけの役
有楽町?でミチコを探す森さんのアップがステキなことったら!
一途で真面目なだけに、偏見をぬぐえない男の苦悩を演じた
これは世間一般の風潮で、いまだ残っている
「従軍慰安婦なんていなかった」という国の言い分を信じて、
被害者女性たちを「自作自演」と笑う日本人までいる
色眼鏡で、一方向からしか世界を見られず、
自らの「常識」をかざして黒白をハッキリ分け
一人ひとりの複雑な事情、苦しみに寄り添えずに断罪する人々
ジョンは「女性は奴隷の、そのまた奴隷だ」と歌ったのを思い出す
映画館のロビーには、上映作品の当時のポスターや、今作の写真なども飾られていた
追。
渋谷でも落語が見られるようになったんだな/驚
“戦争と女たち 2018/06/16 ~ 2018/07/06
戦争に翻弄されながらも戦中・戦後を生き抜いた女たちを描いた作品を特集。『従軍慰安婦』の再映も!”
監督:田中絹代
出演:
森雅之 真弓礼吉
久我美子 久保田道子
道三重三 洋 礼吉の弟
宇野重吉 山路直人 旧友
香川京子 保子 古本屋店員
田中絹代 下宿のおばさん
関千恵子 事務員風の女
中北千枝子 レストランの女
花井蘭子 とんかつ屋の主人
木下恵介 写真屋
加島春美 礼吉の少年時代
夏川静江 母
ほか
“田中絹代の第一回監督作品。丹羽文雄の同名小説を木下恵介が脚色した。
成瀬巳喜男が脚本に手を入れ、笠智衆や入江たか子などそうそうたるメンバーがカメオ出演を果たしている。
年老いた洋妾役で田中絹代本人も出演。
戦争から帰還したエリート軍人の真弓礼吉は、弟の洋のアパートに身を寄せながら、山路の仕事を手伝っていた。
山路は兵学校時代の友人で、洋妾(外人相手の娼婦)から米兵へのラブレターの代筆を生業としていた。
ある日、山路の店へ道子がやってくる。彼女は戦前、礼吉と付き合っていた恋人で、他の男と結婚したはずだった。
どうして自分を捨てて他の男と結婚したのか、どうして米兵相手の洋妾になったのか。
変わり果てた道子に激怒し、礼吉は酒におぼれるようになってしまう。”
大好きな森雅之さん×久我美子さんの主演作で、前回観逃したのを悔やんでいたら、再上映されて、早速観て来た/歓喜
田中絹代さんが監督なのかあ/驚
女性目線だからこそのきめ細かい悲哀が感じられる
ラストの男性のセリフが胸に刺さった
洋妾に絡まれるシーンで、後ろの男性は笑っていたけれど、
この辺がどうにも噛み合わない男女の意識の違いなんだな
この大女優がこの役で!というところが可笑しかったのかもしれないけど
笠智衆さんがチラっとカメオ出演していたり、特別出演者の豪華さがさすが
関連して、有馬稲子さんら、トークショーの顔ぶれもスゴイ
▼あらすじ(ネタバレ注意
冒頭、スタッフの名前が手書きで、花が添えられているのも女性監督らしい
幼馴染の真弓礼吉と久保田道子は、小さい頃から好き同士
マユミが戦争に行き、手柄をたてる一方、ミチコは母を亡くして、後妻にいじめられ
父母から縁談を迫られる
父:兵隊を待っても帰らないよ と言われて泣き崩れるミチコ
ミチコの結婚を知り、マユミは絶望して、戦地で死にそうな目にも遭い
帰国後も、人妻と知りつつ、東京に引っ越したと耳にしたミチコを5年間も探し続けている
弟・ヒロシの部屋に居候し、英語やフランス語の翻訳の仕事を細々としているマユミ
ヒロシ:
兄さんはなぜ結婚しないの? 兄さんくらいの腕があれば、立派にやっていけるはずなんだ
なにかワケがあるんだね 結婚すれば、生活なんてどうにでもなるよ
マユミは財布の中にミチコの若い頃の写真をしのばせ、手紙もまだ持っている
手紙には、結婚してもなお、幼い頃からお慕いしていた気持ちを伝えておきたかったと書かれている
弟は、古本を売ってマージンをもらって生活費にしている
「たまには外に出たらどうだい」と言われたマユミは、旧友・山路直人に会い「仕事をしないか?」と誘われる
ごちゃごちゃした商店街の一角で手紙の代筆をしているヤマジ
お客として来るのは洋妾(外人相手の娼婦)たち
戦時中、アメリカ兵と暮らして、子どももできたのに
戦後、彼らは妻子のもとに帰国し、ろくに養育費・生活費も送ってこないため
「涙に濡れて、お待ちしております」などと英語で名文句を書いてもらっている
最初は戸惑い、彼女たちを軽蔑するマユミだが、弟の部屋に居候している引け目から引き受けるうちに
だんだん仕事にも慣れてくる
ヤマジは、2人の子どもがいて、妻も病身のために始めた仕事だが、続けるうちに、
彼女たちの困窮、生きなければどうにもならないという力強さが分かったと話す
ヒロシは兄の仕事ぶりを見に行ったついでに入った古本屋で店員の保子と出会う
次々とアメリカの雑誌等が持ち込まれ、ダブって仕方ないとこぼす保子 名案を思いつくヒロシ
商店街の使っていない板を使い、屋台をたてて、交番で許可をもらい
保子から仕入れた雑誌等を売る仕事を仲間と始める
700円で仕入れた本を1200円で売り、「アイデアが勝負だよ」
代筆の店に来た女性の声がミチコに似ているため、後を追い、2人はとうとう再会する
(久我さんの声はステキな特徴があるものね それにしても登場前までが長かった
ようやく会えても、結婚相手から逃れ、貧困の末にアメリカ兵に身を任せて子どもをもうけ、
その子どもを亡くし、生活費を送って欲しいと代筆を頼みにきたミチコをどうしても許せないマユミは、
「なぜまっとうに生きなかったんだ!」と酷く罵倒し、泣いて詫びるミチコ
珍しく泥酔して帰った兄の財布からミチコの写真を見つけたヒロシは
ヤマジに相談して、2人の仲をとりもとうと奔走する
ヤマジはミチコの実家を調べ、ヒロシが会いに行き、事情を話す
ヒロシ:兄さんも許したいんだ 僕もミチコさんと結婚して欲しい
ミチコ:せめてまともな仕事を見つけてからにします
その後、一流ホテル?のクロークの仕事を見つけるミチコ
ヒロシは早速、2人を会わせようとレストランにマユミを呼ぶが
事情を話すと「僕は会わない!」と出て行ってしまう
ヤマジに「彼女に罪はない これは君の再生でもあるんだ」と諭され
再びレストランに行くがもう出たと言われる
実家にも寄るが、まだ帰らないため玄関先で待つことにする
だいぶ待ったが兄が来ないと分かり、家までミチコを送るヒロシ
そこに「ミッチーじゃない? お久しぶり!」と洋妾3人に声をかけられ
「人違いです」と言うと怒って「今度は日本の男を相手にしてるのかい?」と野次られる
やっとのことで振り切るが、疑惑を隠せないヒロシ
ヒロシ:君は本当に旦那さんと、アメリカ兵の2人だけだったのかい?
ミチコ:
事務をしていたら知人になったの
あの人たちは、仲良くなるとみんな仲間だと思うのよ
でも、誰に言っても信じてもらえないんだわ
泣きながら、フラフラと道路に出て、クルマに轢かれるミチコ
実家に警官が来て
「ミチコさんが交通事故に遭ったので、誰か病院に来て下さい」と言われ
慌ててタクシーを走らせ、激しく後悔するマユミ
ヤマジ:
オレたちは戦争で必死に殺し合い、敗戦後は必死に生きた
一体誰が誰に石つぶてが投げられるというんだ 許してやれよ
真っ白な包帯をキレイに頭に巻いた久我さんの真正面からの顔も美しい
ふと、目を開けて「終」の文字が出る 希望の見えるエンディングにホッとした
敗戦当時であっても、逞しく生きる商店街の人々の暮らしぶりも見事に描かれている
田中さんは監督の才能もあったんだなあ
ちなみに笠智衆さんは、クロークにコートかなにかを預けるだけの役
有楽町?でミチコを探す森さんのアップがステキなことったら!
一途で真面目なだけに、偏見をぬぐえない男の苦悩を演じた
これは世間一般の風潮で、いまだ残っている
「従軍慰安婦なんていなかった」という国の言い分を信じて、
被害者女性たちを「自作自演」と笑う日本人までいる
色眼鏡で、一方向からしか世界を見られず、
自らの「常識」をかざして黒白をハッキリ分け
一人ひとりの複雑な事情、苦しみに寄り添えずに断罪する人々
ジョンは「女性は奴隷の、そのまた奴隷だ」と歌ったのを思い出す
映画館のロビーには、上映作品の当時のポスターや、今作の写真なども飾られていた
追。
渋谷でも落語が見られるようになったんだな/驚