過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part2からのつづき。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。
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『小さな恋のメロディ』(1971)
監督:ワリス・フセイン 出演:マーク・レスター、トレイシー・ハイド ほか
日本で大ヒットし、主演の2人もアイドルになった今作に初めて触れたけれど、
様々なジャンルがある中、これは純粋なスクールもの。
'70年代という自由や解放を求める時代の雰囲気がにじみ出ている。
難しい解釈なしに、10代始めの男の子と女の子、微妙な心の動き、
あふれんばかりのエネルギーと無邪気さをそのままフィルムにおさめただけでも価値がある。
マークとハイドは、どちらもヒットはこの1本のみ。
2人のどこまでもピュアで嘘のないまっさらな愛らしさが永遠に人々の心に語り継がれてゆく。
英国も日本に負けないくらい教育熱心な国のようだが、「本当の教育とは何か?」という大きな問いも重要なテーマ。
子どもをルールで押さえつける退屈で理不尽な教師、体罰、体面をとりつくろい、話をろくに聞きもしない親。
「どうして幸福になっちゃいけないの?私たち一緒にいたいだけなのに」
道理、道徳はすべて大人たちが都合のいいように作りあげたものばかり。
それに従って生きていく子どもたちは、同じようなつまらない大人になってゆく。
♪TO LOVE SOMEBODY などやわらかくロマンティックなビー・ジーズの音楽もピッタリ
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『ラストムービー』(1971)
監督・出演:
デニス・ホッパー 出演:ピーター・フォンダ、ジュリー・アダムス ほか
音楽:クリス・クリストファーソンほか
こうゆう訳の分からなさの中にもストーリーがあって、詩と映像があるフェリーニ風どんちゃん騒ぎの映画も嫌いじゃない。
『イージーライダー』の後、ホッパーが原案を出して実際ペルーに行って撮ったけど、
ハリウッドでは受け入れられなかったっていう裏話にも納得。
タイトル通り、これはアンチハリウッドのホッパーが作り出した、ハリウッド映画自体を批判した作品。
ホッパーが自分のオールヌードの生々しい性描写を披露したり、所々野原の美しい風景があり、
クリスが♪BOBY & MAGGY を歌うシーン、'70年代フォークミュージックを散りばめているあたり、手作りで自由な撮り方は独特。
途中何箇所か"SCENE MISSING"なんて意味不明のテロップも今じゃあまり気にならないけど、
きっと当時は「一体何なんだ?」と感じただろう。
「唯一、俺が犯した過ちは映画だ」
でもいまだに映画稼業から離れないで、いつのまにやら
ハリウッドの大御所の一人になっていたホッパーは、今作をどう振り返るだろう。
はかない夢を追い続け遠くはなれた荒野に「よそ者」として暮らすアメリカ男。
異国を愛しながらそこになじめず、恋人を愛しながら必要以外の時は殴ったり、罵倒したり
暴力とセックスのニューシネマだけど、どうしてか嫌いにはなれない。
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『三文オペラ』(1989)
監督:メナハム・ゴーラン 出演:ラウル・ジュリア、リチャード・ハリス、ロジャー・ダルトリー ほか
題名は聞くけど観る機会のなかった今作。映画化も3度目。
ザ・フーのロジャーがロックオペラからオペラ映画に出演し、
歌も演技もすっかり役者になりきっているのは全く予想外/驚
ラウルが今年54歳とはまたビックリ。中世の紳士風、実はレディキラー役にピッタリ。
歌声は別だろうけど、プロの歌手にひけをとらない演技。
しかし、ロンドンにこれほど浮浪者があふれ、警察も汚職にまみれ、貧困で満ちていたのか?
「裕福なら善人にもなれる」これが現実だろうけど、決して歌って笑い飛ばしちゃいられない。
今作は究極の社会風刺で、現代社会にも厳しく訴えるものだ。
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『ウィズ』(1978)
監督:シドニー・ルメット 出演:ダイアナ・ロス、マイケル・ジャクソン ほか
音楽:クインシー・ジョーンズ
たっぷり2時間、名作『オズの魔法使い』のジュディ・ガーランドも忘れるほど
ありそうでなかった
オール黒人キャストのミュージカル映画。
白人ばかりの映画が当然の中、俳優がすべて黒人なのは珍しいんじゃないかな?
ダイアナとマイケルていうスーパースター2人の共演
ダイアナは歌唱力だけでなく感情たっぷりの演技にダンサーとまじってのアップテンポなステップもあり、
マイケルも今じゃ絶対かかしの演技なんてしないだろう/驚
女性のように透き通った声に、美形の顔立ち、歌はもちろん、難しい独特な動きのある役を見事に演じている。
舞台はN.Y.。地下鉄や暴走族なんかも登場させて、ブラックミュージックによるミュージカルが一番の見どころ。
♪外へ出るのよ、一人じゃなにも始まらない。外の世界は広いわ、助けを求めるの
というドロシーのセリフにハッとした。
ファンタジーとして楽しませると同時に現実世界を描く、そしてアメリカ映画にはいつも
「帰るべき家と家族
」というテーマがある。
ロケの1つに遊園地のあるコニーアイランドが出てくるのはいかにもって感じが出ている。
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『1941』(1979)
監督:スティーブン・スピルバーグ 出演:ダン・エイクロイド、ジョン・ベルーシ、ナンシー・アレン、ジョン・キャンディ ほか
ハッキリいってスピルバーグにはコメディ映画は向いてないってことに尽きる
真珠湾攻撃後の日本との戦争って設定も、日本人にしてみれば気持ちよく笑えるテーマではないし、
戦争風刺にしても東洋人や黒人差別、偏見のギャグばかり。
唯一スピルバーグらしいのは、セットを気前よく次から次へとぶっ壊して、きっと金がかかっただろう
と思わせることと、『スターウォーズ』並にオーケストラを使ったパンパカパーン!て音楽かな。
ベルーシの起用を宣伝しておいて、マッドな飛行機野郎(相変わらずの信じられないハンテンションのドタバタぶり
の他は大した活躍の場がないし、ダンの頭脳派な笑いをとるシーンも少ない。
金髪美人がやたら出てきて、マッチョで能無しの兵隊にバービー人形みたいに引きずりまわされるのも見ていていい気がしない。
2時間たっぷりあって、途中からすっかり寝てしまった
世界の三船さんは、日本軍司令官役でコメディにも出演してたのね。ディズニー映画『ダンボ』に涙する大佐はイイ。
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『イージー・ライダー』(1969)
監督・出演:
デニス・ホッパー 出演:ピーター・フォンダ、ジャック・ニコルソン ほか
挿入歌:ステッペン・ウルフ♪Born to be wild、ザ・バーズ♪Born to follow、ザ・バンド♪The Weight、
フラタニティ・オブ・マン♪Don't bother me、ジミヘン♪If 6 was 9、ロジャー・マギン♪It's all right Ma、♪Ballad of Easy Rider ほか
ロックンロール、ドラッグ、セックス、バイオレンス、、、ホッパーが撮った
ニューアメリカンシネマの始まり。
まともな死に方をしないだろうと思ってはいたが、こんなショッキングなラストシーンは'60年代の終わりを象徴するかのよう。
「アメリカは自由のためなら人殺しだってする。皆が話す“個人の自由”を説くことと、
自由であることは全く違う。本物の自由がそこにあると皆恐れるんだ。君の長髪がそれを象徴してるのさ」
キャプテン・アメリカなんて名とは程遠いジャンキー、バイクも虚勢そのものに思える。
ワイルドに生きてワイルドに死ぬことを夢見る彼ら'60年代の落とし子とは?
精神を解放し、偽善を暴き、戦争がくだらないと主張し、現代の様々な選択肢を作り、
わたしたちはそれに甘んじている。彼らが世の中を変え、動かしたと言うこともできる。
今じゃすっかり落ち着いたホッパー?も、この頃は世界を変えてやろうとする若いヒッピーだったのかと思うと不思議な気がする。
彼らの中にはとうに早死にした奴もいれば、安定して、今の現代っ子に
「一体何を考えてるんだ」と首をかしげる者もいるんだろう。
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『ヘアー』(1979)
監督:ミロス・フォアマン 出演:
ジョン・サベージ、トリート・ウィリアムズ ほか
第1級ロック・ミュージカル。ベトナム戦争に行き詰まったアメリカで若者たちは動き始めた。
グルーヴィーなロック、ドラッグ、ラヴ&ピース、そしてタイトル通り長い髪を伸ばして
戦争や上流階級の地位を守るためのあらゆる体制に反対するために。
'80年代の到来を思わせるクリアで洗練された映像で見事に'60年代をよみがえらせ
♪アクエリアス はじめブラックミュージックを使って、これまでのハリウッドミュージカルとは
まったく違った自然でセンスあふれる作品に仕上がっている。
個人主義のアメリカ人がこれほど男女わきあいあいと調和のとれたハーモニーが響く
博愛主義者の集団ばかりとは信じられないくらい、白人も黒人も、男も女も、
クラスレス、平等でただ自由に愛し合うだけならとても美しいのに
軍の訓練場に反戦のロックが流れて、ギターのうなる音に背筋がゾクっとする。
サベージは『ディア・ハンター』で大成功した直後の作品で、信じられないくらいキュートでセクスィ
バーガー役のトリート!?も完璧キュート、アガシ風にワイルドでセクシー。
ビーズに羽飾りのヒッピースタイルでの独創的なダンス、センスのイイユーモアもあり、
ロマンスあり、10代の妊娠あり・・・まさに一流品。
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『ネットワーク』(1976)
監督:シドニー・ルメット 出演:フェイ・ダナウェイ、ピーター・フィンチ ほか
「これは視聴率が悪くて殺された最初の男でした」・・・言葉も出ない。
「私たちは怒っている。もう耐えられない!」という叫びが町中に響き渡るシーンは圧巻。
日常生活にテレビ
がすっかり溶け込んでいるテレビ世代としては、今作は本当に複雑な心境。
殺人、誘拐、事故、火事
、スキャンダル・・・毎日毎日見たくもないのに流れる悲惨なニュース。
ウンザリしきっているはずなのに、そこに永遠の真実など存在しないと分かっているのに、
食べものから衣服、言葉から思想までまさにテレビの言う通り。
「間・非個人の集団」そう、まさにそれだ。
テレビのような速いテンポで痛烈にアメリカの実体、テレビ業界の実体を暴く痛快さの反面、
ハワードの言う一言一句はそのまま私たちの現実生活を批判してもいるんだ。
ダイアナは「テレビの化身」、心も情もない魔女的に描かれている。
従来なら“仕事一本の男に、泣いて待つ女”というパターンが、'70年代の女性解放運動とともに逆転して、
そのバリバリなキャリア・ウーマンぶりは見ていてとても気持ちがいいが、マックスは彼女に惹かれながら
「君は狂人だ」という。ボーヴォワールなら一体何というだろうか?
こんなストレス過剰な日々じゃ、テレビ業界人は長生きできないんじゃないの?!
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『白昼の幻想』(1967)
監督:
ロジャー・コーマン 出演:ピーター・フォンダ、デニス・ホッパー、スーザン・ストラスバーグ ほか
「現代、問題になっている麻薬をとりあげたショッキングな映画です」
これはドラッグが、問題というより、むしろ素晴らしいという讃歌だ。
初めてLSDを試した時のヘヴィトリップを延々と描いた作品。
後にアメリカン・ニュー・シネマ・ムーブメントを起こすピーターとホッパーが共演。
B級映画の王様コーマンの名のもとに、あらゆる幻想的なカメラワークを駆使して、
まるで観客も一緒にstonedしている気分に誘う。主には金髪美女とのセックスだけど。
女性がトリップしたら男性のイメージを見るだろうか? 全然別のもののような気がする。
「何か欠けているんだ」「皆そうよ」「現実じゃ物足りないのね」
日本でも10代の普通の学生がスピードやコカインにまで手を出している時代が来ている。
退屈で、いつも失望させられる現実から抜け出して“自己発見のため”に脳内に潜り込む。
そこはLOVE & PEACE、宇宙と美とのコンタクトの世界。その先は・・・?!
人間とは似ても似つかない二度と現実と意識に戻れないデッドエンド。
イメージの中にはあのウッドストックのシーンもある。
ロック、セックス、ドラッグざんまいだった'70年の象徴ウッドストック。
テレビからは生臭いベトナム戦争のニュースが流れていた。
平和なぬるま湯につかって、ゆっくりと精神が歪んでいきつつある現代、
自分の本来の姿、一番恐れている恐怖、脳を解放するのも一興のごとく思えてくる。
酒、煙草、とにかくヒトにはなぜか時々毒が欲しくなるときがあるのだから。
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『SOMETHING WILD』(1988)
監督:ジョナサン・デミ 出演:ジェフ・ダニエルズ、メラニー・グリフィス、レイ・リオッタ ほか
モンド(風変わりな)・ムーヴィー
ロマンスあり、アクションあり、でもノリのいいコメディなのがイイ。
ジミヘンの♪ワイルド・シング のレゲエ調、テーマ曲もサイコー。
ジェフのいかにも普通なヤンキーぶりは笑えるし、リオッタが初映画出演にして見事な存在感。
メラニーはエキゾチックな黒髪のボブスタイル、ベビー・ボイス、型破りなまさにワイルド・ガール。
「死んだライオンより、生きた犬さ」
ハチャメチャな女の子に人生までハチャメチャにされちゃった不運な男。
でも、毎日腐りそうに退屈な世帯持ちには、いつかこんな女の子が現れて、
生活を変えてくれないかとちょっと願っているってのが今作のメッセージでは?