国会閉会中のこの時期を利用して筑波にある
以下の農水省系の研究機関を視察しました。
〇 独立行政法人 国際農林水産業研究センター
〇 独立行政法人 森林総合研究所(森林総研)
〇 独立行政法人 農業環境技術研究所
国際農林水産業研究センターと森林総研は、
JICA勤務時代に何度も耳にしていて、
何となく業務内容等は知っていました。
しかし、実際に研究所を見たこともなければ、
最近の研究成果もよく知りませんでした。
たいへん興味深い研究をしている組織です。
国際農林水産業研究センターは特に興味深く、
日本の国際貢献のための重要な機関です。
例えば、温室効果ガスのメタンの排出源は、
畜産業だったり、水田だったりします。
水田から発生するメタンの量を減らしながら、
同時に農家の増収とコスト削減を図る農法を、
ベトナムのメコンデルタで研究しています。
また畜産業から出るメタンの量も膨大です。
あまり一般では議論されていない点です。
自動車から出る温室効果ガスと同じくらい、
畜産業から温室効果ガスが排出されます。
自動車はCO2、畜産はメタンガスですが、
その温室効果は、ほぼ同じとされます。
従って、畜産のメタンガス対策は重要です。
途上国の農家に「地球温暖化に貢献しろ」と
言っても、それだけでは普及しません。
農民には、地球の未来より、生活が大事です。
具体的なメリットがないと普及はしません。
国際農林水産業研究センターの研究者は、
農家に収量増やコスト減の利益があって、
かつ、メタン減につながる農法を開発し、
普及しようと努力しています。
貧しい農家の所得を向上させながら、同時に、
温室効果ガスを減らす農法がすでにあります。
あとは広く普及させることが課題です。
以前にエコカー減税やエコカー補助金に対し、
1兆円もの多額の税金を投入しておきながら、
CO2削減効果が低いことを指摘しました。
1兆円の100分の1、1000分の1でも、
水田や畜産のメタンガス対策の研究や普及に、
投じた方が地球温暖化対策としては有効です。
国際農林水産業研究センターの研究を聞くと、
すぐにでも役立つ技術や知識がありながらも、
予算不足で普及できていない印象を受けます。
灌漑施設や道路、港湾等の高価なインフラを
ODAを使ってドンドン建設するくらいなら、
地球温暖化対策の水田や畜産のメタン対策に
お金を使った方がよいと思います。
森林総研や農業環境技術研究所においても、
同様にすぐれた技術を開発していますが、
どこも予算削減で苦労していました。
地域ごとに異なる農政は都道府県が主体になり、
農水省は研究開発等に力を入れるべきです。
それも県の農業試験場ではできない国際研究や
大規模な国家プロジェクトを農水省が担うのが、
あるべき姿だと思います。
また通常のODAは使えなくなった中国など、
いわゆる「ODA卒業国」向けの協力として、
こういった農業分野の環境協力は最適です。
非ODAの研究協力で中国やマレーシア等の
ODA卒業国と日本のパイプ役を果たすには、
3つの農水省関係の研究機関は重要です。
JICA以外の政府機関の国際協力についても、
よく勉強しなくてはいけないと実感しました。
*ご参考:2012年6月19日付ブログ「エコカー減税の欺まん」