■「イノセンス/Innocence」(2003年・日本)
監督=押井守
声の出演=大塚明夫 山寺宏一 田中敦子
※2004年筆。
さ、予習もできたし、いざ「イノセンス」!。劇場にはいわゆるアニヲタさんらしき人々(しかも明らかにリピーター)がいるわいるわ。僕は決してそういう人々を蔑視してませんよ。何の分野でもそうだけど、ひと昔前なら一部熱心なファン向けの趣向だったものが、今やメインストリームだったりするじゃないですか(例えばタランティーノがカンヌの審査委員長になったり・笑)。好きなものが好きって言える時代になったのはいいことだよね。・・・ハイ、前置きはこれくらいにして。
「Ghost In The Shell」の続編にあたる本作。僕は正直前作よりも好き。映像の技術的進歩もその理由のひとつだけど、やはり複雑なストーリーの面白さだな。脳に外部記憶装置やらインターフェイスが取り付けられる時代だけに、出てくる人たちみんなが吐く台詞のひとつひとつがとにかく深い。言葉ひとつひとつが蘊蓄(うんちく)と引用の嵐、悪く言えば知識のひけらかしだから、そこを快く思わない人にはつまらない映画だと思うのね。でもわかんないなりにそこに意味を求めようとする人(それでもその大半はわかんないんだけどね)には、見終わった後でいくつかの台詞がしっかり頭にロードされていると思うのだ。
人間とロボットについての持論を次から次に登場人物が並べ立てるから、「いいかげん仕事の話しようゼ」というトグサの気持ちもよーくわかるんだよな(笑)。でもその持論それぞれがまた面白いから引き込まれてしまう。命(ここでは意識やら人格を含む)を吹き込まれたものは皆同じという視点。この物語くらいに技術によって人間が機械に近づいていくような時代であれば、従来の人間と機械の境目はいよいよ曖昧になる。テクノロジーを身につける時代となりつつある今、この物語のような義体化はそれ程夢物語ではないのかもしれない。手塚治虫作品に、脳だけが生身の人間である老人が、最後に虫に脳を食われて死んでしまうというエピソードが出てくる。ロボットとの人間の共存を考えた「アトム」やアシモフの”ロボット三原則”。押井監督はそこから一歩進んで一個の意識・人格として命について考えてみたのだ。
この映画の結末も含めて、話の難しい部分をあれこれ考えて哲学する(考え込むってことね)のもいいけど、それよりもう一度観たいと思った。素子が再登場する場面はグッ!とくるし、バトーとトグサのバディムービー的面白さ、銀幕に吸い込まれるような映像美、音楽、どれをとっても一流です。アニメを毛嫌いするのはやめませう。隣で配偶者が言っている。「そしてあなたもリピーターのアニヲタたちの仲間入りね。もう映画ファン返上すれば?」・・・(汗)。
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