■「ウディ・アレンの誰でも知りたがっているくせにちょっと聞きにくいSEXのすべてについて教えましょう/Everything You Always Wanted To Know About SEX But Were Afraid To Ask」(1972年・アメリカ)
監督=ウディ・アレン
主演=ウディ・アレン ジーン・ワイルダー バート・レイノルズ ジョン・キャラダイン
ウディ・アレン映画が大好きだ。時にシリアスに、時にクスリと笑わせてくれながら男と女について考えさせてくれる。どの時期の映画も好きなのだが、そもそも僕が最初にウディ・アレン作品を観たのが「スリーパー」なもので、初期の笑える映画も繰り返し観てしまう。その中でももう何度観たかわからないくらい好きなのがこの「SEXのすべて」。忘れもしないけど、僕が住んでいた大分市では「13日の金曜日PART2」の同時上映だった。「それはないよー」と涙をのんだ高校時代。あ、別にエッチな興味でどうこうではありません。もちろん、タイトルだけで裸がでない変なコメディである予備知識はもった上でだから。社会人になってレンタルビデオ店で発見。そして今月、ウディ・アレン旧作の廉価版DVDが発売されたもんだから、迷わず予約した。「アニー・ホール」や「マンハッタン」よりも優先順位は上(恥)。
この映画は7話構成のオムニバス。面白さにバラつきはあるけれど、それぞれに魅力がある。王女の裸を見たいばかりに媚薬を使う道化師、獣となさって人生を踏み外す医師、変わった性癖の妻をもつ伊達男、女装趣味のおじさん、変態さんが登場するテレビ番組、マッドサイエンティストの性研究。そして男性の体内を舞台にした"ミクロの精子圏"。第3話では、「前戯が大事だ」とアドバイスされたイタリア男が「えっちたーれ(前戯)」と繰り返す台詞まで面白い。恋人の羊と引き裂かれた医師をジーン・ワイルダーが演ずる第2話は、悲しくもおかしい。6話は、ホラー映画やB級SFの老舗ハマープロ作品のパロディ。性を研究するマッド・サイエンティストの宅で起こった事故から、現れた巨大な乳房が町を襲う衝撃作(笑)。母乳攻撃する乳房に、十字架を片手に挑む主人公には笑える。40代の今観ると、女装癖を隠していた夫に「打ち明けて欲しかった」と言う妻の姿に、昔と違って暖かなものを感じる。
ラストの"ミクロの精子圏"は、女性を口説いてセックスに及ぶ男性の体の中で何が起こっているのかを描いた大傑作。同じようなネタは世界中にあれこれあるけれど、これほどバカバカしくてでも身につまされる(汗)コメディがあろうか。行為がうまくいかない原因を探すところや、出口に向かって精子が行列をつくるところは映画史に残る名場面。いろいろ言うよりもまずは観るべし。好き嫌いは普通の映画以上に分かれるだろうけど、ハマったら抜け出せない魅力ある大傑作。
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