■MAY/斉藤由貴
From「恋する女たち」(1986年・日本)
■「さよなら」/斉藤由貴
From「さよならの女たち」(1987年・日本)
思えば80年代の斉藤由貴は本当に大活躍だった。NHK朝の連ドラ「はね駒」からフジテレビの「スケバン刑事」まで、期待される若手女優としてもアイドルとしても十二分の活躍。アイドルに走る年齢層だけでなく、多くの年代から支持されていた。歌手としての活動も成功した。
♪せいふくの、むねのぼ、た、ん、ぅをー
と歌う"卒業"では、”オレにもそんな事があってさ・・・”と多くの男子に見栄をはらせた(笑)。
♪ごめんね 今まで黙ってて 本当はカレがいたことをー
と歌う"AXIA~かなしいことり"(後に松本典子がカバー)で多くの男子は胸を痛めたものだ(笑)。僕はシングルではアニメ「めぞん一刻」の主題歌だった"悲しみよこんにちは"、アルバムでは崎谷健次郎プロデュースの傑作「Age(アージュ)」がお気に入り。90年代以降、新たな面をTVドラマでみせたりと意欲的だったが最近の活躍は以前程ではない。ちょっとスキャンダルもあったしね。映画デビューは、故相米慎二監督の「雪の断章-情熱-」。導入部が舞台劇調だったり、荒野を走るヒロインを空撮で追ったり(しかもバックには笠置シズ子が流れる!)と、奔放な相米演出の実験的な怪作だった。ヘッドフォンでバービーボーイズ聴きながら踊ってる姿を思い出す。
だが斉藤由貴の映画代表作といえば、やはり大森一樹監督3部作。彼女のおっとりとしたキャラが生かされた青春映画たちだった。86年の「恋する女たち」は、相楽”ビー玉お京”晴子、おニャン子の高井麻巳子というフジテレビ系アイドル競演でも話題となったヒット作。”まみまみ”のディスコクィーン役には呆れたが、ツルゲーネフやサリンジャーについて語るような文系男子向けインテリジェンスさ(?)は評価。さらに姉役は原田貴和子、ヌードを描かせろと迫る美術部員に小林聡美、恋のお相手は柳葉敏郎というキャストもよかった。主題歌"MAY"は谷山浩子とMAYUMIによる雰囲気のある名曲。恋する乙女の思いが伝わるいい歌唱でもあったなぁ。
でもお話として、三部作の中で一番好きなのは「さよならの女たち」だ。主人公が20歳過ぎて突然、父親はミュージシャンとして音楽界にカムバック、母親はイルカの調教師になる、とそれぞれの道を選ぶ。主人公は迷いながらも自分の「これから」を探そうとする・・・・。黒いコートにサングラスで、ギター片手に歌う伊武雅刀の姿!やけにかっこよかったものだ。
♪ひーかーりのー、なーかを、かーけーてゆーくー
と伊武さんが歌うこの曲は、エンディングでは斉藤由貴によって歌われる"「さよなら」"。原由子作の素敵なバラードだ。実は、僕はこの映画を就職活動中、高速バスの中で初めて観た。「これから」を考えていた自分をそこに重ねていた。そんな意味でも忘れられない映画。
※斉藤由貴の歌が流れる80年代の主な映画
1985年・「雪の断章」 = 情熱
1986年・「恋する女たち」 = MAY
1987年・「さよならの女たち」 = 「さよなら」
1988年・「優駿」 = ORACION 祈り(with来生たかお)