■Surrender To Me/Ann Wilson And Robin Zander
From「テキーラ・サンライズ/Tequila Sunrise」(1988年・アメリカ)
監督=ロバート・タウン
主演=メル・ギブソン ミシェル・ファイファー カート・ラッセル
「チャイナタウン」や「ミッション・インポッシブル」の脚本で知られるロバート・タウンが監督したラブ・サスペンスのヒット作。足を洗いたい麻薬密売人メル・ギブソン、その旧友で刑事カート・ラッセル、美しきレストランオーナーミシェル・ファイファー、といかにもハリウッドらしい美男美女ぞろいのキャスティング。三角関係がもつれていく展開は本筋の犯罪物語以上にスリリング。三角関係と西海岸のオシャレなムードばかりが僕には印象に残って、メロドラマ的イメージがどうしても強く感じられた。この男優二人の顔合わせならばアクションを期待してしまうが、これはさにあらず。レストランの地下室でのキスシーンは、きっかけといいムードといい往年のハリウッド映画をみているようだ。メル・ギブソンとミシェル・ファイファーの美しいラブシーンも話題となった。水面に映る二人を追うカメラはオスカーにノミネートされた。
そんなラブ・サスペンスのムードに貢献しているのはもちろん音楽。全体のスコアを担当しているのは、デイブ・グルーシン。「チャンプ」や「黄昏」のようなオーケストラ路線とは違い、「恋におちて」のような本業のジャズ/フュージョン路線のスコアである。洗練されて都会的なサウンドで僕は大好きなのだが、サントラには2曲しか収録されていないのが残念。あくまでも80年代コンピ系サントラの流れなので仕方ない。1曲はリー・リトナーのギターが、もう1曲はデビッド・サンボーンのサックスがフィーチャーされている。それがまた映画自体を「恋愛映画>犯罪映画」の方向に引っぱっていると言ってもいいだろう。
主題歌 Surrender To Me で恋愛映画ムードは最高潮となる。チープトリックのロビン・ザンダー(うちの配偶者Mのフェバリットシンガー)とハートのアン・ウィルソン(体型が変わった今も僕のフェバリットシンガー)という豪華なデュエット。全米トップ10ヒットを記録している。哀愁漂うメロディー、エレクトリック・ピアノのイントロも美しいこのラブバラードは、リチャード・マークスのペンによる。デビッド・フォスター作品やビリー・ジョエルのバックコーラスとして活動していた時期もあったが、その後 Don't Mean Nothing や Hold On To The Night などのヒットを飛ばした。特に Right Here Waiting や Now And Forever(映画「ゲッタウェイ」主題歌)を代表としてバラードに定評がある。Surrender To Me はその後サマンサ・コールのアルバムで自らデュエットしてセルフカバーしている。
サントラには他にも注目に値する楽曲ぞろい。Recurring Dream はオーストラリア出身クラウデッド・ハウスの新曲。大ヒットした Don't Dream It's Over は名曲ですよね。デュラン・デュランも日頃と違った抑えめの楽曲 Do You Believe In Shame を提供。脱退したアンディ・テイラーもソロで1曲(Dead On The Money)。映画のタイトル自体がトロピカルカクテルの名前(イーグルスの同名曲を使う発想はなかったのだろうか?)だから、あのオレンジ色のような明るいイメージがつきまとう。エヴァリー・ブラザースとビーチボーイズの共演 Don't Worry Baby でそんなリゾ-トっぽい気分は高まってくる。オープニングで刑事たちがラジオで聴いているボビー・ダーリンの Beyond The Sea も含め、サントラ全体として聴きどころが多く飽きさせない。是非カーオーディオで聴きませう。
※Richard Marx関連の曲が流れる主な80年代の映画
1985年・「グーニーズ」 = Love Is Alive (Phillip Bailey)
1985年・「セント・エルモス・ファイアー」 = If I Turn You Away (Vikki Moss)
1988年・「テキーラ・サンライズ」 = Surrender To Me (Ann Wilson and Robin Zander)
1989年・「ロック・イン・ブルックリン」 = (Everybody's Gotta) Face The Music (Kevin Cronin)
Tequila Sunrise - Original Theatrical Trailer