先月まで居候していたバッタや蛾たちが挨拶もせずに突然いなくなってしまった。夜になると家じゅうを闊歩していたのは、アシダカグモだった。そばに人間がいてもものおじせずにじっと待機する姿をたびたび目撃する。どちらが主人だかわからなくなってしまう。今年は例年よりゴキブリが多くなった気がする。どうも、足高蜘蛛があまり仕事をしていないのではないかと疑惑がよぎってしまう。
そのうちに、大黒柱にいたのはカマキリだった。そして、人間にかまわず室内を飛翔するあつかましい居候となった。それが一匹だけでなく数匹もいるではないか。相談でもしたのだろうか。肉食のカマキリは餌を求めてわが家にやってきたのだろうか。どこかの国じゃないけど、当局はそんな事実を知っているのに黙認しているようなのだ。
しかも、黒褐色の「コカマキリ」までやってきた。コカマキリの前足の内側に黒い紋があるのも特徴だ。ふつうのカマキリより小型で細い。性格もおとなしく好戦的ではない。だから、威嚇する姿はあまり見られない。むしろ、危険を察したらすごすご逃げるか死んだふりをする平和主義者でもある。
パソコンをいじっていたら突然大きなカマキリが飛んできてオラの足に登ってきた。こちらの眼をじっと見て様子をうかがう。昼間は緑色の眼が夜には黒目になる。オオカマキリかチョウセンカマキリかはわからなかった。
じいっと睨まれるとやっぱり気になるので、カマ公を手で払ったら機嫌を損ねたみたいだった。遠くに逃げることはせず、すぐそばで態勢を整えて身構えたみたいだった。
威嚇のポーズだ。翅を広げて自分の大きさを誇示する。このポーズをしばらく続けて近くのオラを威嚇するのだった。ついにオラとの「戦闘態勢に入れり」というわけだが、オラはカマ公を無視していたらいつのまにかテレビの上に移動していた。
ひょっとすると、カマ公もテレビのニュースを見ていて、オラが引っ掛かったことがある「詐欺メールにご用心」を捨て台詞にしたのかもしれない。
ところで、「カマキリ農法」というのがある。大量のカマキリを畑に放して害虫を駆除するというやり方だ。これだと農薬を節減できて収量をあげる効果があるそうだ。ただし、カマ公は益虫も食べてしまうのでほどほどがいいようだ。