先月末からときどき「アオマツムシ」(マツムシ科)がやってくる。からだが平べったくて左右のレモンイエローのラインがお洒落だ。オスは背中の模様が幾何学的だそうだが見たことはない。やって来るのはどういうわけかいつも緑一色のシンプルな装いのメスばかり。
文部省唱歌「虫の声」の「あれマツムシがないている チンチロチンチロ チンチロリン」という歌詞が懐かしい。マツムシは実際に「チッチリ、チッチリ」と鳴くらしいが、「アオマツムシ」は「リーリー」とうるさいくらいに鳴くという。「青マツムシ 黙らすほどの 雨ならず」(片山由美子)と俳句で詠まれるくらい大合唱だという。わが家に来るアオさんはおとなしい。
それより、好奇心旺盛で和宮様の料理レシピをじっと研究して動かない。ひょっとして餌がなくて腹がすいていたのかもしれない。アオマツムシの餌といえば広葉樹の葉や虫の死骸だからね。バッタと言えば草むらにいるイメージだが、アオマツムシは樹上にいることが多いという。樹上の方が安全だからだろうか。
次にそのアオマツムシが向かったのはパソコンだった。知的好奇心が旺盛なのかもしれない。近くにいると作業の邪魔になるがそのしぐさを観るのもなかなか面白い。触角の髭を丸めて口できれいに磨いていることさえある。マツムシは激減しているが、暑さに強いアオマツムシはどんどん北上していてまもなく北海道へ生育圏を進出する勢いだ。明治になって中国から江戸にやってきたという帰化昆虫はやはりたくましい。ウマオイやコオロギが跋扈しているわが家だが秋の夜長の演奏会をいつやってくれるだろうか。