全米で驚異的な注目を受けた映画「ゴジラ ー1.0」を録画で観る。2023年11月に上映された本作品は、ゴジラシリーズ37作目にあたり、ゴジラ誕生70周年記念にもなる。時代背景は太平洋戦争の終戦直後から復興を懸命に邁進していった頃の日本だった。
監督はVFX撮影で注目されている山崎貴。表題の「ー1.0」は、敗戦した日本の直後をゼロとするとゴジラの出現で復興しつつある東京が再び破壊された意味でマイナス1.0という意味があるようだ。今回のゴジラの存在は今までのゴジラ以上の圧倒的な破壊力が表現されている。それはどうにも解決不能の壁に日本の国家と国民が追い込まれている状況にあった。
それは、今日のウクライナやパレスチナの置かれている情勢と酷似している。同時にそれは、ゴジラ出現情報を隠してきた日本政府に対して「情報統制はこの国のお家芸だからね」とか、体質が以前と「変わらない日本だから」という台詞に監督の日本の戦後の時代認識が感じられる。しかし、そういう困難な状況でも、戦前の反省から未来のために「生きて」いくこと、困難な現状に自分なりに抗うことを提起しているのが本作品のテーマのように思う。
主人公の特攻隊生き残りの「神木隆之介」(敷島)の全身を使った演技がとびきりいい。また、近所の癖のあるしかし敷島の家族を支援してくれる「安藤サクラ」(太田)の演技も光る。ゴジラ封じ込めにかけるブレーンの「吉岡秀隆」(野田)は「always三丁目の夕日」で一緒だった監督との信頼関係が伝わってくる。 (以上の画像は「TOHO CO.LTD.」から)
(画像は「ファミ通」webから)
ゴジラのとどめを刺したのは、ゼロ戦の後継機・局地戦闘機「震雷(シンデン)」を操縦した敷島の体当たりだった。しかし、エンディングは見事な意外性と感動が仕組まれていた。なお、「震雷」はB29の迎撃用として開発されたが、実戦をしないまま終戦を迎えた幻の戦闘機だった。小さな翼が機体の前方にあり、プロペラが後ろにあるという異形の戦闘機だった。とにかく、VFXの迫力ある画面はハリウッドを震撼させた技術力が満タンであり、興行収入も大いに稼いだ作品となった。娯楽だけに終わらない監督の願いが込められた噛み応えある映像が実現した。