ステージおきたま

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コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

それ、中国語?『女たちの満州』発音で苦戦?

2016-05-26 08:56:01 | アート・文化

 舞台が満州だから、当然、中国人が登場する。ストーリー中では当時にならい満人、って言ってるけど。女子義勇隊の下働きをしている老人とその知り合いの青年の二人だ。義勇隊員たちが相手の時はたどたどしい日本語で話すが、中国人同士の会話や、興奮した時には中国語が飛び出す。開拓団に安く土地を買い叩かれ、開拓地の周辺で小作や手伝いとして暮らす人たちはたくさんいた。その人たちと日本人との関係が、物語の大きな柱の一つになっているから、とても大切な役どころだ。他に満人の泥棒も登場するし、長く満州に暮らし現地の言葉が話せるお女郎さんも出てくる。だから、中国語の特訓の対象は4人、とは言え、老人と青年が主体だ。

 1か月ほど前、近くに済むHさんとその娘さんに講師をお願いして、本場の発音を嫌というほど手ほどきしてもらった。その時の様子はブログに綴った。もちろん、2時間程度の口移しでマスターできるほど甘いものではなく、正しい発音を録音させてもらい、そのダビング音源を元に各自練習してきた。今回は、その自習の成果が実っているかどうかと、場に相応しい言い方になっているかをチェックするため、仕上げの講習をお願いした。

 4人のうち数語しか出てこない泥棒とお女郎さんはすぐに合格、さて、問題は老人と青年!まずシーンを他の出演者とともに演じて、全体の流れを理解してもらう。次にセリフ一つ一つ先生から厳しいチェック。発音しては直され、直しては訂正され、どうにか青年の方はパスできた。

 で、老人だ。中でも「日本人になんか話したって無駄だ!」というセリフがどうしても発音できない。録音CDを何度聞いても聞き分けられない、と、先生の口元に耳を近づけての、まさに口移し講習を行った。

 何度も何度も繰り返すが、どうも、その音自体が、役者さんの持つ音のレパートリーに無いらしく、何としても先生の発音に近づかない。横で二人のやり取りを聞く僕にも、役者の苦労が伝わってきて、なんとも切ない。結局、最初の訳を手直ししてもらって、簡単で言いやすい表現に変えてもらった。それでも、役者は自信回復というわけにはいかず、再度録音して聞き取り稽古することになった。頑張ってほしいもんだが、どうも、うやむやに済ますことになりそうだ。もし、観客に中国語を解する人がいたら、ごめんなさい!だ。

 やっぱり、ここでも耳だ。障害を持つ人を除けば、誰だって音は同じように聞こえているはすだ、って漠然と思い込んでいる。でも、それはまるで違う。人により耳センサーの感度性能は大きく異なっている。音の大きさに対してならば、これは健康診断の際の検査項目にも入っているから、能力差はわかりやすい。納得も行く。年寄はテレビの音量をアップしないと聞き取れない。僕もそうなりつつある。

 だが、耳の感度には、音量以外にも音質や音の波形の微妙な違いを聞き分ける力も関係している。音の高低もある。高低差が聞き取りにくい人は、アクセントが自己流になりやすい。日本語のアクセントやイントネーションは、音の高低変化が主体だからだ。正しく聞き取れなければ、正しく発音できるはずがない。耳の感度ということをもっともっと自覚することが必要だと思う。聞き取れないのは、集中力の不足、それだけではないってことが教育現場などでも認識されるといいと思う。

 音の感度は鍛えることが可能だ。発せられる音に集中する訓練だ。聞こうとすること、たったこれだけのことでも、耳は飛躍的に感度良好になってくる。すぐれた音楽家のような鋭敏さにたどり着けないまでも、言葉の言い回しの相違くらいは聞き分けられるよう研ぎ澄まされてくる。まず、自分の耳が聞き逃してる、あるいは、聞き分けられていない音が多量にある!という認識を持つことだ。知の集積が、無知の自覚から出発するように、現実世界の音の多彩さに対して、自分の耳はあまりにも一部分しか聞き取っていないということを自ら言い聞かせることから始まると思う。

 

 

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