台風10号の降雨量は沢筋に大きな傷跡を残した。孤爺は災の河原で一寸法師の如く活躍したいところなれど八艘飛びの様な運動量は絶対無理で「転ばぬ先のスコップ」で漸く面目を保っているのだ。ただ取水地の終わりの見えない取水堰探索に辟易して気分を変えたくて壁面に取り付いたのである。今回の増水は2022年10月の崖崩れで左岸側に押し流されたままの排砂バルブ下の土砂を流し去ったので結果的に河床に戻った事になる。しかし、それはそれで今後の心配がある。現場を見れば排砂バルブのハンドル軸が流下物を抱えてしまうのだ。今回の増水後、このバルブを中心に流木や残差物が堆積してあろうことかバルブの向きまで変えてしまう水圧を働かしている。このまま放置すればおっつけバルブ部の破損や送水管の破断は避けられず多少の増水なら気にしなくても良い位置に設えたかった。
2022年以前は崖の傾斜は今より緩やかで浸食も穏やかだったから右岸側に岸辺が出来ていて、ここに送水管を置き、固定は崖に生えていた灌木からロープや針金で維持していたのだった。それが出来なくなり送水管も右岸に渡りまた左岸に渡るというコースのまま2年が経過し今回に至ったのだ。「さーて、どうする家康・・・」と思考の結果、垂直の崖面に吊り下げる事にした。とりあえずテントを固定するペグを崖に打ち込み番線で止めてみた。砂礫の崖斜面だから25cmのペグでは効きが悪く崩れるのではと思っていたのだが意外に固く緻密でハンマーでたたき込むのに苦労したほどなのでがけ崩れが無ければ数年は大丈夫だろう。
バルブ上の流木を除く ➡ 露わにした。排砂バルブの向きが動いている
その心配ながけ崩れだが写真で判るようにまだ上部に滑り残りが出っ張っている。いつ崩れ落ちるか分からない逃げ場のない狭い沢の中の作業は肝が冷える。一旦崩れれば足元は玉石ゴロゴロの河床だし避難する場所も無い切通しみたいな沢なのだ。高所恐怖症に加え崖下恐怖症もあるのが判明したのだがどうにもならないのであった。すべて崖面に固定できなくてたわんだ部分は崖上からロープを下げて吊るした。河床にあった管を吊るして少しだけ遠ざけたので、これでも増水2メートル程度なら辛抱してくれるだろう。