出先から帰宅すると、玄関脇に見慣れぬものが置いてある。
「何じゃろう・・・」 オッこれは無臭ニンニクではないか。有り難い。
実はつい先日、思いがけぬ形で近くの友から、まだ泥のついた掘り立て無臭ニンニクを2本頂いたばかり。
だから、見慣れぬものではあるがその正体はすぐに判明。
次に、誰が持ってきてくれたのか、という疑問が湧く。今回は6本という大量に、普通のニンニクも添えられている。
ひょっとして先日の近くの友がわざわざ持ってきてくれたのだろうか。いやいや、彼はそんな芸当のできる男ではない。
と思いつつも、あれでも、もしかして・・・と思って一応お伺いの電話を入れた。
こういう時の電話というのは簡単なようでなかなかの難しさがある。下手な言い方をすれば催促がましくなる。当たりさわりないようにそれとなく聞いてみる。案の定彼ではなかった。となればはてさて誰が・・・。
日が暮れるころ電話が鳴った。ここから40km離れたところに住む、会社時代の気のいい後輩君が親しげに語りかけてくる。
久しぶりの挨拶もそこそこに「今年はちょっと気を入れて百姓したら、無臭ニンニクが異常に獲れたので食べてください・・・」と。
な~んだ、異常に獲れたから持ってきてくれたのか・・・?? その後が如何にも彼らしい。
最近は少し馬力がなくなって、カラオケも近くの小さいスナックで楽しんでいる。そのスナックがこのたび、採点付きの新しいカラオケ機種を導入した。それで100点を出したのは自分が最初で、後は誰も出ていないんよ。だから、先輩に是非挑戦してもらいたいし、あの頃より上手くなった自分の歌を聞いて欲しいです・・・と張り切っている。
そう言えばあの頃、一生懸命歌っている割にどこか外れていたよなー。何度も何度も「先輩あの歌をもう一度聞かせてください」などと深夜まで付きあわされたなー、などと思い出しながら相槌を打つ。
カラオケをあきらめて田畑にいそしんでいるものと思っていたが、やはりカラオケはあきらめ切れなかったのだろう。
動機や理由はどうでもいい。先輩後輩の関係を離れて10数年になろうというのに、40kmの距離をものともせず、無臭ニンニクを持って訪ねてくれたことには大いに感謝。あいにく私が留守だったことは彼にとって残念至極であったろう。
もしあの時私が家にいたら、コーヒーのお代りしながら話し込んだのだろうか、それとも近くのカラオケに連れて行ったのであろうか。
「友、遠方より来る」。何の接待もしてあげられなかったが「いつかきっとカラオケ対決を」という彼の夢はつながったことになる。
受けて立とう。いつか・・・。