「トーちゃん!Hさんから電話代わってー!」
妻から受話器を受け取ると懐かしい声が飛び込んできた。
「今からおじゃまして良いですか」「大歓迎どうぞどうぞー」
十分程するとマックスの歓迎する鳴き声が聞こえて、迎えに出た。
「やー、お久しぶりです」と、挨拶もそこそこに上がって頂きます。
「年賀状を見たけれど、凄い水害だったのですねー」
久しぶりの来訪で有り、電話を受けた際、私の脳裏を一瞬掠めた懸念は当たっていた。
年賀状に四コマ載せた写真と、簡単に記した水害の事を心配してお訪ね下さったのです。
前回にお会いしたのはもう一昨年の暮れのように思う。
毎年オートバイ二台にタンデムでツーリングするのに、昨年は会う機会も持てなかった。
やはり、水害の後始末に追われ、時間の余裕も心の余裕も無かったのでした。
このご夫婦と付き合い始めて二十年弱になります。
私の娘が中学生の時の、国語担当の教師でいらっしゃいました。
いわゆる「ウマが合う」ってやつで、妙に会話が弾む中になりました。
もちろん、オートバイと言う共通の趣味が有ったことも大きな要素ですが。
でも、担任では無くても、現役の教師を家に招くのは躊躇が有り、
我が家に招いたのは、娘の卒業式が終わり、送別会も終わった後のことでした。
招きに応じられご夫婦で我が家にお越しいただいたのがその後の長いお付き合いの始まりです。
そのとき、初めて奥さんも音楽の教師だと知りました。なんと教員のご夫婦だったのでした。
お見舞いに頂いたケーキを早速切り分けて頂き、話に花が咲きます。
そして、話の合間に、話題にとお出ししたのがこの「辻占せんべい」です。
こんなくるりと巻いたせんべいですが、特徴は名前の通り中に「占い」が入っている事。
いわゆる「駄菓子」の一種だと思うけれども、この辺りだけのものか、どこにでも有るものなのか。
二つに割ると、こんなピンク色の紙片が出てきます。
そして、何時も妙に割った人に符合する「占い」が出て大笑いすることになります。
お勧めして、まずご主人がパリンと割ると・・・・。
「『金が敵』かー、ほら、新しいオートバイを買えって言うんじゃないの」と大笑い。
それならばと、奥さんが割ったせんべいから出てきたのは「やだ私も同じ『金が敵』じゃないの」
と、四人で大笑いになってしまった。こんな符合は滅多にあることでは有りません。
「よほど、お金が余っているってことじゃないの」なんて妻が混ぜ返し、再び大笑い。
しばらく笑った後に、どれとばかりに私が割ったせんべいには、「子に従え」だって。
いやー、これも妙に納得させられる占いですねー(笑)。
同時に割った妻も妙に神妙な顔つきで読み始める。
「女の子ができる」だって。
「これは私には出来る筈が無いから、娘の事だな」なんて勝手に解釈して再び大笑い。
そりゃ、あんた、あなたに出来たら、イエスキリスト並みの奇跡ってもんですよ(笑)。
いつも四人で集まるとこんな具合の会話で笑いが絶えません。
お二人で声をそろえ「ところでスティードは大丈夫でしたか」と言われる。
「あはは、やはりそれもご心配でしたね」と再び大笑い。
「大丈夫、スティードも泥水に完没しちゃったけれども、復活して試乗もしてますから」
「あー、良かったー、また一緒にツーリングをしましょうよ」「はい、OK、OK」
一昨年になったかな、十日町地域を中心に開催された「大地の芸術祭」もオートバイで、
走り回り、見て歩いたものでした。
今年こそ一緒に走ろうと固く約束を交わして、車上の人となりました。
お二人と話をしていると、本当に時間など忘れてしまいます。
二組の夫婦が元気でオートバイのタンデムが出来る限り、楽しいお付き合いは続きそうです。
「大地の芸術祭」見物の際の写真が見つかりました。追加です。
私たちは相変わらずの「ロシナンテ」こと「ホンダスティード600」で、
友人ご夫婦は何台かお持ちのうちの一台、手軽で足回りの良いオフロードタイプの250でした。
楽しい楽しいタンデムでの散策でした。
「大地の芸術祭」は三年に一度の開催だから、今年の開催になるのかな。
もし、開催年だったら、乗り手もオートバイも老骨に鞭打って出かけましょう。