土曜日の「農天市場」にお客さんが重なったタイミング。
夫婦とお見受けする、お二人がお見えになり、静かに野菜を見ておられた。
他のお客さんが去っても、お二人はゆっくりしておられる。
ふと、女性のバッグに目が行き驚いた。素晴らしい工芸品では有りませんか。
お願いして見させていただくと「冬の間に私が作ったのよ」と言われる。
ふたの部分は、柿渋で染めた丈夫な布製です。
おっとー、下に「石焼き芋1キロ600円」なんてスベルべ手書きの品書きが(笑)。
感嘆の声をスベルべ夫婦に、奥様は「あんたのバッグも見せてよ」と旦那様に。
はにかむ様子を見せながら、自動車に戻って持ってきて下さったバッグと札入れです。
網代編みと呼ばれる手法で見事に作り上げられています。
上の口に当たる部分まで、一切の手抜きなしのすばらしい作品です。
見事なこの札入れは、スベルべママの友人二人がお揃いで持っていたとか。
「二人が1万円だと言ったような」「いやー、とてもその値段では手に入らないな」。
スベルべママの勘違いのようです。そうですよね、そんなに簡単に手に入る価値の物じゃないですよね。
そして、奥様が身に付けていらっしゃった、このブローチも素晴らしい。
「家じゃね、こういう小物は旦那が作り、大きなバッグは私が作るって世間と反対なのよ」。
感心して見させていただいていると、もう一つバッグから取り出して見せて下さる。
いやー、中に配したガラスのとんぼ玉が宝石に見えますね!
すると、突然奥様がバッグから取り出したブローチをスベルべママに下さると言う。
遠慮しつつも、有難く頂いてしまいましたよ。お礼はさつま芋で済ませて頂きましたが(笑)。
さて、皆様、これらの素晴らしい工芸品の材料は何だとお思いでしたか?
これは「山ブドウ」の蔓の皮なんですよ!
お話を伺うとこの材料「山ブドウの蔓の皮」は年間のある時期の1週間から10日間ほどの間しか採れないと言う。
このタイミングで採った物以外は細工には出来なくなってしまうのだそうです。
「家の爺さんが作った『スカリ』と言う背負い道具は100年は経っていて今も使える」
なんて、さりげなくお話されます。
飾って置くのでは無くて、実用品として使いこむと色が黒く変色し見事な変化を見せるのだとか。
陶磁器も然りですが、芸術作品としてでは無い、実用品日用雑貨としての素晴らしい価値ですね。
何でもご夫妻は『奥会津』の柳津町から小出で開かれた「クラフト展」に来られたのだとか。
そして、偶然に通りかかった「農天市場」が気になりお立ち寄りになったのだったとか。
『柳宗悦』を持ち出すまでも無く、我が日本人は美の意識が高く日用品にもそれを求めたのですね。
もっと、もっとこんな作品を生み出す、工芸家、職人を大切にしなくてはならない。
そんな気持ちを強く持たせて頂いた、工芸品でもあり、スベルべ夫婦にも素晴らしい土曜日でした。